[Reviews]Vol.22 やっぱりすごかった!Phanotm 4 PRO Ver.2.0、カタログスペックで見えない「違い」を検証

すでに完成度の高さが評判のPhantom 4 PROが、先日Ver.2.0にアップデートされました。事前にPhantom4 PROの生産中止情報は来ていたので、Phantom 5の登場を待ちわびていたユーザーも多かったと思いますが(筆者もそのひとり)、まずはマイナーバージョンアップの機体が登場。今回は、この「Ver.2.0」の「Ver.2.0」たる所以をレビューしたいと思います。

ノーマルからの変更点

まずは基本スペックの確認です。残念ながらカメラスペックや最大飛行時間は変わらず、映像伝送システムやプロペラの静音性が向上しています。基本的なスペックは価格帯で考えれば十分すぎるほどなので特に不満はないのですが、このあたりのアップデートはPhantom 5ということなのでしょう。

【共通スペック】

最大飛行時間 約30分

ビジョンシステム 前方ビジョンシステム
後方ビジョンシステム
下方ビジョンシステム

障害物検知 前方&後方障害物回避
左方&右方赤外線障害物回避

カメラセンサー 1インチCMOS
有効画素数:20M

最大動画解像度 4K60P

最大ビットレート 100Mbps

飛行時間、センサー類、カメラ性能はそのまま。とは言え、最大ビットレート100Mbpsの4K映像を記録できるカメラはこの価格帯ではレベルの違う高画質映像を記録できます。バッテリーもこれまでのPhantom 4シリーズのものを使えるのはウレシイところです。

高性能なカメラは、このような表現も可能にします。

【変更点】※()内はノーマル版

重量 1375g(1388g)

動画伝送システム OcuSync(Lightbridge)

プロペラ形状 静音(騒音ノーマル比:60%減)

プロペラの形状変更はひと目でわかるレベル。今回のアップデートの特徴的なところ

なぜか重量は13g減。何らかの部品(または素材)変更がされたと推測されます(映像送受信関連?ESC?)。注目すべきはやはりその静音性とOcuSync動画伝送システムによる伝送安定性。レビューもそのあたりを中心に検証していきます。

静音プロペラ+新型ESCの効果

さっそく新旧Phantom 4 PROを比較してみます。簡易的な仕掛けなのですが、スマホの騒音計アプリを使って計測したいと思います。高度1.2mでのホバリング→高度20mでのホバリングという動きを(1)Phantom 4 PRO Ver.2.0、(2)Phanton 4 PRO(ノーマル)、(3)Phantom 4 PRO(ノーマル+静音プロペラ)という順番で比較・計測したいと思います。ぜひ音声を出しながら下記の映像をご確認ください。

音の大きさはやはりVer.2.0<ノーマル+静音ペラ<ノーマル…という並びになりました。実際に聞いた感じでもそのような順番です。意外だったのは「ノーマル+静音ペラ」が「ノーマル」と比べてさほど差がなかったということです。確かに、少し音が静かな気はするのですが、「明らかに違う」というほどではありませんでした。反面、「Ver.2.0」と「ノーマル」では明らかに違います。プロペラを回した瞬間にどちらの機体か判別できるほどでした。

また、アプリの数値上の違いはほとんどなかったのですが、上空や遠方に機体をフライトさせた際のVer.2.0の静音性は非常に優れものです。地上から音を拾いながら同時に空撮をしなくてはらないようなロケーションでは非常に効果を発揮する可能性があります(アプリの数値が3種とも違いが出なかったので、アプリが音を拾いきれていない可能性があります)。

その他挙動について

操縦をしていて気づいたのが、加速・減速が非常になめらかな点。日常的にメイン機体としてノーマルのPhantom 4 PROを使っているので、Ver.2.0を操縦したときにすぐに気づきました。特に筆者は低速域をよく使って空撮をするのですが、その加速・減速が非常になめらかで思い通りのスピード感で撮影することができました。

また、それとは真逆に、低速から停止させる際の機体の挙動はMAVIC PROのように「ギュンッ」と機体を傾けながら急停止するような動きをします。確実に機体を停止させるための味付けなのかもしれませんが、なめらかに機体を停止させることに快感を覚えている筆者にはちょっと違和感のある動きでした。

これらのことを考えると、ESC等のモーター駆動系の変更があり、その影響でなめらかな加減速と静音プロペラも加えた静音性を実現しているものと思われます。静音性に加えて、操作性という面でもVer.2.0は性能向上している(とくに低速エリアにおける加減速)と断言できます。

まとめ

基本性能をそのままに、正当なマイナーバージョンアップをしたVer.2.0。ポイントをまとめると下記のようになります。

【良かった点】
(1)静音性の向上
プロペラ音が静かになったのは感覚的にも明らか。音声同時収録時にプロペラ音の影響を少なくすることができるだけでなく、周辺環境への精神的な影響も和らげることもできます。

(2)操作性の向上
低速域でのなめらかな加減速は操縦性の向上をもたらします。特に被写体と接近した撮影で低速フライトが必須の場合などではよりなめらかな撮影ができます。

(3)映像伝送性能の向上
今回具体的なテストデータは取れなかったのですが、Phantom 4 PROが3機フライトしている環境でもOcuSyncを搭載したVer.2.0は1kmほど前方に飛ばしても映像の乱れはありませんでした。同じ環境でノーマルのPhantom 4 PROをフライトしたところ、ときどき伝送映像が止まるときがありました。もちろん、空撮で訪れたロケ地でのことなので厳密には同一環境ではないのですが(ただし同一時間帯、同一場所)、そのような差が出たことも事実です。より安定した映像伝送を望むならVer.2.0を選択するのがベターかと思われます。

【残念だった点】
動画伝送システムがOcuSyncに変更になって伝送映像が安定したことは喜ばしいことなのですが、今までのPhantom 4 PRO / Advで使っていたプロポはペアリングできません。Cendenceも同様ですね。バッテリー交換ができないPhantomシリーズを使う際にはプロポの予備も常備している筆者にとってはとても悩ましいところです。

結論、プロフェッショナルの入門機として、またはハイアマチュアの上位機として新規購入する際はPhantom 4 PRO Ver.2.0は最適な機種と言えるのは間違いありません。

また、すでにPhantom 4 PROをお持ちの方も、低速域での操作性や静音性、電波状態が悪い環境での伝送映像の安定化に価値を感じる方には魅力的な機体となっています。

このレビューが購入判断の参考になれば幸いです。

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