甲子園懸けた名勝負 長崎県高校野球の軌跡 2000年代~

 この夏、第100回記念大会を迎える全国高校野球選手権、その舞台となる甲子園を目指した各地方大会からは、これまで数多くの名勝負、ドラマが生まれた。大逆転、無安打無得点試合、ノーシードからの快進撃-。現役の指導者や関係者、読者らの意見を基に、長崎大会の熱戦の歴史を振り返る。

◎2005年決勝 清峰13-8瓊浦/7点差を挽回
 三回までに7失点した清峰が猛打で逆転して初優勝。左腕古川秀一が救援登板で流れを変えた。主砲の森大雅、2年生の廣瀧航、佐々木伸之らが快音を響かせ、甲子園でも選抜王者の愛工大名電(愛知)を破るなど快進撃。07年には学校近くの松浦鉄道の駅名が「清峰高校前」に改称された。

◎2009年準々決勝 長崎日大3-1清峰/大瀬良、今村 意地の投げ合い
 現在、プロ野球広島の投手陣を支える大瀬良大地と今村猛による本県史上最高レベルの投げ合い。のちにいずれもドラフト1位でプロ入りした逸材同士の勝負は、わずかの差で大瀬良の長崎日大に軍配が上がった。
 清峰の今村はこの年の春の選抜優勝投手。決勝で現西武の菊池雄星を擁する花巻東(岩手)を完封したのをはじめ、5試合計44回で防御率0・20という好成績を残した。走者を背負うと一段階ギアを上げる高い投球術が持ち味で、当然のように優勝候補筆頭として夏の長崎大会に臨んだ。
 だが、大瀬良は鋭いスライダーを低めに集めて、散発4安打9奪三振で完投。これでチームは勢いに乗り、県の頂点へ駆け上がった。甲子園は初戦で菊池の花巻東に“雪辱”されたが、大瀬良は大学進学後も成長を続け、今季は既にリーグ最多の9勝を挙げている。

2009年の本県高校野球界を盛り上げた長崎日大の大瀬良(左)と清峰の今村=佐世保市総合グラウンド野球場

◎2011年決勝 海星8-7清峰/将来プロ続々
 海星が延長十二回に競り勝った。現西武の永江恭平が先発して、7-3の九回に149キロを記録。土壇場で追いつかれたが、続く2死満塁のピンチを切り抜けたのが勝利につながった。この夏は2回戦で、現ソフトバンクの釜元豪が主軸の西陵と、現阪神の松田遼馬を擁する波佐見が対戦。釜元の好機での一打が大きく、西陵が5-1で勝った。

 ここに挙げた試合はあくまでも一部で、ほかにも数え切れないほどの名勝負があった。阪神で最多勝を獲得した瓊浦の下柳剛、ロッテで強打を誇った海星の堀幸一、ソフトバンクで現役でプレーする佐世保実の川島慶三ら、高校卒業後も活躍を続けた好選手も多数いた。
 そんな歴史を積み重ねてきた夏の100回目の大会。球児たちはどんなプレーを見せてくれるか。新しく生まれる筋書きのない熱闘ドラマが期待される。(敬称略)

 


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