ETRC:第2戦ハンガロリンク。王者フレートライナー初勝利も“帝王”が4戦2勝

 FIAの欧州選手権として開催されるトレーラーヘッドたちの肉弾戦、ETRCヨーロピアン・トラック・レーシング・チャンピオンシップの第2戦がハンガロリンクで開催され、週末4戦のうち標準グリッドのレース1、レース3で4度の王座経験者ヨッヘン・ハーン(ヨッヘン・ハーン・レーシング/IVECO)が完勝。リバースのレース3で現役王者のアダム・ラッコ(バギラ・インターナショナル・レーシング・システム)のフレートライナーが今季初勝利を飾った。

 先日、7月開催のシーズン第4戦スロバキアがWTCR世界ツーリングカー・カップとの併催イベントになると発表されたFIA ETRCは、6月16~17日の週末に今季第2戦のイベントを迎え、最低車両重量5500kgのトレーラーヘッドにはよりツイスティなハンガロリンクが舞台に。

 そのハンドリングコースで今季初ポールポジションを獲得する速さを見せたのは、シーズンスタートの開幕戦で苦戦を強いられたフレートライナーの王者ラッコ。参戦マシン中唯一のボンネットキャブ型のチャンピオントラックは、帝王ハーンのIVECOをわずか0.28秒差で抑えきり、昨年9月以来となる最前列を射止めた。

 土曜午後にスタートが切られたレース1は、そのフレートライナーがオープニングラップを制するも、続く2周目には背後に付けた“帝王”ことハーンが早々に勝負を仕掛け、ラッコをオーバーテイク。その際、IVECOを封じようとディフェンスラインを取ったラッコの動きが決定的な判断ミスとなり、フレートライナーは大きく失速。この時点で6番手にまでポジションダウンを喫することに。

 これで首位に浮上したハーンは、地元出身のノルベルト・キス(タンクプール24レーシング)のメルセデス・ベンツ・トラックスを従え順調に首位を快走。8周目にはターン12でキスがワイドになりさらにプレッシャーが弱まると、11周のレースを悠々トップチェッカー。盤石の今季3勝目を飾った。

「その瞬間、アダム(・ラッコ)はわずかにミスを犯し、僕のトラックに飛び込むスペースを与えたんだ。それはクリーンなバトルで、僕も彼にラインを残したし、彼もまた僕の空間を空けてくれていた。オーバーテイクの瞬間はとにかく『Go,Go,Go!!』と心の中で叫んだよ(笑)。こういうバトルは誰とでもできるわけじゃないし、開幕5戦で3勝はハッピーだ」と振り返った帝王ハーン。

 そしてキスに続く3位には、メルセデス・ベンツ・トラックスのミスに乗じて2番手を狙う勢いを見せたチーム・シュワーベントラックス、シリーズ紅一点のシュティフィ・ハルム(IVECO)が入り、終盤のバトルでタイヤにダメージを負ったラッコは9位に終わっている。

 しかし、このトラブルがリバースポールのレース2に向け優位に働いたラッコは、フロントロウからのスタートを確保。しかし楽なレース展開とはいかず、終盤にステアリング系統にトラブルを抱えたフレートライナーは、2番手に迫るラインアート・レーシング代表、2年ぶりのシリーズ復帰となったレネ・ラインアート(MAN)に猛烈なアタックを受け、からくも防戦。

 最終的には王者の意地を見せたラッコが、0.3秒差でしのぎ切り待望の今季初勝利をマーク。2位には復帰後初表彰台のラインアートが入り、3位表彰台には8台の“トレーラー・トレイン”のバトルを制したハルムが浮上し、昨季まで所属した古巣のチーム代表と並んでの表彰台を獲得している。

 前日をリピートするタイムスケジュールで予選スーパーポールから始まった日曜は、前日の勢いを持ち越したハーンがポールポジション獲得から悠々レース3を制覇。週末最終となるレース4は、前日2位表彰台を上回り、ラインアートが復帰後初勝利を飾っている。

 続くFIA ETRC第3戦は、例年シリーズ最大の観客動員数を誇るトラックの本場、ドイツ・ニュルブルクリンク戦となり、6月29日~7月1日の週末には欧州全域からトラッキーたちが集うこととなる。

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