東急や近鉄、勤務地が理由の退職防止で相互受け入れ

東京急行電鉄や東京メトロ、近鉄グループホールディングスなど全国11社の大手民営鉄道会社は15日、勤務地を理由に就労を続けることが困難な社員を相互で受け入れる新たな枠組み「民鉄キャリアトレイン」を立ち上げたと発表した。背景には、配偶者の転勤や介護を理由に退職し、他の地域に移る社員が将来的に増加する危機感がある。各社はキャリアを積み重ねて働きがいを感じられる勤務制度を設けて、優秀な人材を確保したい狙いだ。(オルタナ編集部=小松 遥香)

「民鉄キャリアトレイン」は東京急行電鉄の呼びかけで始まった。参加する企業は、同社のほか東武鉄道、京浜急行電鉄、京王電鉄、東京地下鉄、小田急電鉄、西武鉄道、名古屋鉄道、近鉄グループホールディングス、阪急阪神ホールディングス、西日本鉄道。

東京急行電鉄社長室広報部広報企画課の江戸卓哉さんは、「現在、総合職の新卒採用のうち女性の数が半数を超え、将来的にライフイベントを理由にした退職が増えると考えている。優秀な人材を確保するというのは各社共通の課題だ」と同枠組みの立ち上げ理由について話した。

相互受け入れの方法は、「出向」「転籍」「再入社」。従業員は働きがいや働きやすさを感じられ、民鉄各社は優秀な人材を相互に活用できる利点がある。11社は、「民鉄キャリアトレイン」を通してダイバーシティマネジメントを実現していきたいとしている。

さらに、各社の許容範囲内でUターンを望む社員の受け入れや、再びの転居で最初に所属した会社に復帰、再入社を認めることも念頭に入れており、同枠組みに柔軟性を持たせる。

東京から福岡までの民鉄を巻き込む形で立ち上がった「民鉄キャリアトレイン」について、江戸さんは「2017年に構想ができ、今年に入って各社との調整を始めた。各社の温度感が異なり、ご賛同頂くのに時間を要した」と振り返った。今後は、参加企業を増やしていくことも検討しているという。

民鉄各社は、鉄道事業のほかに不動産事業や各地域に密着した独自のビジネスモデルを展開する。11社は、社員が持つ民鉄ビジネスのノウハウを「共通財産」と捉え、即戦力になる優秀な人材を相互に生かすことで、沿線地域の発展にも貢献したい考えだ。

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