農家、時々バンドマン 雲仙・千々石の荒木政勝さん「地元に活気を」 7月に音楽&農業フェス

 長崎県雲仙市千々石町の農家、荒木政勝さん(34)が7月29日に同町の上山公園で音楽イベントを開く。昼間は農家、夜はバンドマンの顔を持つ荒木さん。本業と趣味を生かし、音楽イベントでは農産品販売や、近くの畑で収穫体験ができるプログラムも予定しており、「音楽と農業を同時に楽しんでほしい」と呼び掛けている。
 同町出身の荒木さんは、長崎県立小浜高時代に友人らとバンドを結成し、ドラムを担当していた。3年生の時、ほかの高校生バンドと一緒に、ステージのある同公園でライブを開いたことも。卒業後、会社勤めを経て家業の農業を継いだ。若手農家でつくる同町農業研究会の会長を務め、高齢者宅に野菜を届けるなど地域貢献活動も続けてきた。
 一方で、ジャガイモやナス、コメなどを育てる毎日に、趣味の音楽は休止状態だった。だが、地域活動の中で他業種の若手と話す機会も増え、「同世代で元気なやつはいっぱいいる。みんなで何かしたかよね」。3年前、そんな気の合う仲間とバンド活動を再開した。
 ドラムを打ち鳴らしながら、「やっぱりやめられない。生活の一部」と笑う。週1回、夜にバンド練習。市外のバンド仲間など新たな輪も広がった。日を重ねるごとに「(地域のために)何かしたかよね」の思いは強まっていった。
 そんな思いを形にしようと今年初め、夏のイベント開催に向けて動きだした。場所は決めてある。「昔みんなでライブをしたあの公園に、もう一度にぎわいを取り戻したい」。出演バンドの交渉に奔走しつつ、せっかく千々石でやるなら「らしさ」を出そうと、農業仲間にも声を掛けた。会場横には自前の畑もある。イベントは「#MINIFES」(ハッシュタグ・ミニフェス)。「小さなフェスだけど、SNSで拡散するように輪が広がってほしい」との思いを込めた。
 当日は荒木さんらバンド約10組のほか、地元中学生のダンスチームなども出演。農産物のほか、地元飲食店も出店し、コロッケやカレーなどを販売する。「育ててもらった地元への恩返しになれば。これをきっかけにいろいろ企画する若者が増えて、活気づいてくれればうれしい」。会場横の畑で、梅雨明けの青空を待つナスを横目に、荒木さんは言葉に力を込めた。

「今年も上出来」。ジャガイモを収穫する荒木さん=長崎県雲仙市吾妻町
メンバーとともにバンド練習に汗を流す荒木さん(中央奥)=長崎県諫早市森山町

© 株式会社長崎新聞社