LamiGirlsで活躍中の元カンパイガールズ今井さやか「売り子を根付かせたい」

LamiGirlsのメンバーとして活躍する今井さやかさん【写真:大森雄貴】

伝説のビール売り子、台湾では北川景子にそっくりと話題に

 2017年末、ロッテホームページ及びSNSで千葉ロッテマリーンズのカンパイガールズが活動に幕を下ろした。メンバーの1人である今井さやかさんは2018年シーズン、台湾プロ野球チームLamigo Monkeys(以下:ラミーゴ)の公式チアガール“LamiGirls”のメンバーとして活躍の場を広げている。

 今井さんといえば、マニアの間では、逸話的に語り継がれている伝説のビール売り子であり、2015年から2017年まで千葉ロッテマリーンズにて、球界初の売り子アイドル「カンパイガールズ」として活躍していた。では、一体なぜロッテのカンパイガールズからラミーゴが所有するLamiGirlsへ活動の場を広げることができたのか。

 LamiGirlsは、台湾の有名歌手、俳優である孫協志氏監修のもと、球場での応援はもとより、芸能活動や各種イベントでのダンスパフォーマンス、写真集やCDの発売など精力的に活動中である。毎年新メンバーオーディションを開催し、老若男女から人気を博している。

 今井さんが、台湾野球を始めて観たのは、2014年11月。台湾で行われた千葉ロッテマリーンズとの交流戦だった。当時、千葉ロッテのファンとして試合に観戦しに来ていたところ、数少ない日本人ファンとして、現地記者に取材や写真撮影を申し込まれた。写真撮影をしていると、そこには大勢の台湾人の人だかりができていた。

「写真撮影をしたのが1戦目で、その日から声をかけられたが、2戦目には球場の大型ビジョンに何度も(画像を)抜かれた。後で知ったけど、SNS上で“北川有像”と話題となり、2日目には周りのカメラマンのカメラがグラウンドではなくこちらに向いていて…」

 有像とは、似ているという意味であり、女優の北川景子にそっくりと台湾で話題になっていたのだ。2014年の交流戦は、ファンの間で伝説になっている。現地ファンに推薦され、LamiGirlsの応援に飛び入りで参加した様子はYouTube上で、素人女性としては異例の3万回以上再生された。

台湾に日本の売り子文化を伝えたい、期間限定でLamiGirls加入

 そして台湾のスタジアム全体を使った熱狂的な応援に感動し、2014年を境に、開幕戦は必ず訪れるようになった。2017年にはロッテのカンパイガールズとして台湾を訪れ、イベントやビール売りをした。この年、ロッテカンパイガールズは解散。今井さんはこれまでのように11年目のビール売りとしての契約を結んだが、心残りがあった。

「台湾野球というものが常に頭の片隅にあり、いつかサーバーを担ぎビールを売るといった日本の売り子文化を伝えたかったんです。2014年にファンとして台湾に訪れて以降、台湾人がマリンスタジアムを訪れ、私からビールを買ってくれるようになりました。台湾でもきっとできると感じました」

 台湾の観戦スタイルは、ホームチームが一塁側も三塁側も埋め尽くし、スタジアム一体となって応援する。日本のようにビールを飲みながら観戦するお客さんも少ない。それでも今井さんは、年明けにラミーゴへ自らを売り込んでいった。ラミーゴ側も前向きで、スタジアムの飲食を管理する担当者を紹介してくれた。

「2月後半、担当者様に会ったら『君、踊れる?』って聞いてきたんですよ。驚いたけど、期間限定でLamiGirlsに入って欲しいとのことでした。LamiGirlsとして踊りや、売り子などとして活躍して欲しいと提案され、ダンス経験はあったので、期間限定の”加入”が決まりました」

 LamiGirlsはオーディションを行い、所属する者のほとんどが芸能事務所に所属する。日本人としてはもちろん初の加入である。加入が決まってからは、頻繁に台湾に訪れることもできないため、100パターン以上ある振り付けのYoutube動画がLamiGirlsより届いては練習を繰り返した。メンバーと初めて合わせたのは開幕戦前。にもかかわらず、見事に馴染んでいる。

夢はサーバー背負って台湾で活動、LamiGirls正規メンバーにもなりたい

 台湾という異国でLamiGirlsとして活躍する今井さんに聞いてみた。

――台湾という地でチアリーダーとして活動することの大変さはありますか?」

「メンバーは、年齢もみんなバラバラだけれども、優しく対応してくれます。言葉が通じなくても理解しようと努めてくれるし、日本語を勉強している人もいます。(千葉ロッテに在籍する)李杜軒選手の妹がペラペラだから通訳してもらったり」

――今井さんから見たLamiGirlsの良さとはなんですか?」

「とにかくファンに近いです。球場で一緒に観戦会をしたり、一緒になって応援したりと、日本や世界にはない近さが魅力。アイドルとしての可愛さもあり、LamiGirlsを目指す人もいるはず。チアリーダーであるが、チアダンスではなく、ダンスをしているイメージです」

 台湾の公式ショップで、自身のスマホケースを発売するなど活躍の場を広げている彼女に、今後の目標を尋ねた。

「やはり、サーバーを背負いビール売り子として台湾でも活動する、という目標は持っています。文化としての売り子を根付かせていきたい。また、LamiGirlsとして、もっともっと中国語を覚え、期間限定の加入ではなく、正規メンバーとして加わりたいです」

 力強く語った彼女は、台湾では現地メディアに囲まれる人気者。日本でビール売り子として地位を築きあげたのと同様、台湾プロ野球界でも居場所を見つけていた。

 NPBや独立リーグ含めキッズのチアリーディングのクラブを保有しているチームは少なくない。しかし、プロ野球の世界で活躍できる大人のチアリーダーは、ほんの一握り。今井さんの存在は、日本のみならず海外でもチアとして挑戦できるキャリアパスを今後も示してくれるだろう。

(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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