大村湾でアオウミガメ保護 元気に大海へ

 長崎市琴海尾戸町沖の大村湾で絶滅危惧種、アオウミガメの子どもが定置網に掛かり、保護された。連絡を受けた九十九島水族館(佐世保市、海きらら)の川久保晶博館長(62)によると、湾内で確認されるのは珍しいという。アオウミガメは暖流域で生息し水温が低くなる湾内で冬を越せないことから、川久保館長らは21日、車に乗せて西彼杵半島を横断。西海市大瀬戸町の砂浜から大海に送り出した。
 アオウミガメは19日、琴海尾戸町の漁業、相川正司さん(73)の定置網に入っていた。甲長43センチ、甲幅37センチ、体重約11キロ。生後4~5年の幼体とみられ性別は不明。甲羅が傷ついた様子もなく元気で、抱えられるとゆっくりまばたきをした。
 川久保館長によると、アオウミガメの産卵地は鹿児島県以南。成長した個体は対馬海流に乗り、平戸西岸などでも確認されている。大村湾内に産卵場所はなく、迷い込んだ可能性が高いという。
 相川さんは「まさか網に入るなんて」と初めてのことに驚いた。そのまま戻せば刺し網などに絡まって死ぬ恐れもあり、船のいけすで保護していた。水温10度以下では生息できないが「この冬、大村湾は水温6度のときもあった」と相川さん。川久保館長は「せっかく生き残った命なので、このまま海へ帰すのがベスト」と外海に面する西海市の海水浴場に運んだ。
 砂浜に置かれたアオウミガメは一目散に海を目指し、荒波の中に消えていったという。川久保館長は「このあとも自然界は厳しい。『頑張れよ』という気持ちだった」と話した。
 アオウミガメの寿命は80~90年。成体になるのに30年。海鳥やサメなど天敵もおり、大人になるのは5千匹に1匹の割合という。

砂浜から海を目指すアオウミガメ=21日、西海市(海きらら提供)
大村湾で保護されたアオウミガメ

© 株式会社長崎新聞社