MICE動きだす

 倒れそうになるほど体が前に傾くことを「前のめり」と言う。良い意味でも、好ましくない意味でも使う。物事に前向きに、進んで取り組むことをそう言うし、先が見通せないのに物事を早まって進めることも言う▲これが駄目なら何を造るんだ、地域活性化の切り札だ、と推進派。いや、造っても行き詰まりかねない、と反対派。長崎市がJR長崎駅の近くで計画しているMICE(コンベンション)施設について、市議会には賛否が渦巻いてきた▲公設民営のMICE整備予算案が、市議会の委員会で賛否割れつつも可決された。本会議でも可決の見通し。田上富久市長が整備の考えを表明してから4年余り、総事業費200億円超の大型事業が動きだす▲3千人規模の学会・大会が開けるホールなどを整備するという。すでにある施設では不十分で、学会や大会を誘致する機会を失ってきた-と推進派は言う。人の流れをこちらに向けよう、と▲県外にも同じような施設がある。すでに「周回遅れ」で、果たして見込みほどの人が来るのか-と反対派は疑ってきた。先が見通せないのに前のめりだ、と▲整備が決まれば先行きを心配する声が消えるわけではもちろんない。市が努めるべきは、前へ前へと事を進めるばかりでなく、声に耳を傾け、不安を拭うことだろう。(徹)

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