「タコノマクラ」商標登録 オランダ商館ゆかりの紋章 長崎・江戸町 「こんな例 他にはない」町おこしに活用へ

 長崎市中心部の江戸町は4月、江戸時代から同町に伝わり、タコのようなデザインから「タコノマクラ」と呼ばれ親しまれている紋章を商標登録した。県庁移転の影響で、人通りが少なくなったという同町。川添弘之自治会長は「来年に迫る長崎くんちの踊町の時にでも、記念品を作るなどして町を盛り上げたい」と話している。
 同町は出島の目の前に位置し、江戸時代には長崎奉行所西役所が置かれた。オランダとの関わりは深く、諏訪神社の秋の大祭「長崎くんち」でも、オランダにまつわる演(だ)し物をこれまで数々奉納している。
 タコノマクラは江戸町のオランダ語表記「Jedomati」から取ったJとDとMの字でデザインされ、寛政年間(1789~1801年)に、出島オランダ商館長から贈られたといわれている。1987年出版の「長崎県紋章大観1」(梶原馨編)には、該当する期間に商館長を務めたのはロンペルケ、ハン・レイデ、サッセ、ヘンミイ、ワルデナールの5人とあるが、このうち誰が考案したかは分かっていない。
 同町に住んでいたオランダ通詞楢林家の人物が手を入れたという説もある。同書はオランダから贈られたこの紋章について「こんなしゃれたものを持っているのは江戸町だけで他に例はない」としている。
 商標登録を提案したのは、同町商店街で卸小売業を営む三瀬健司さん(50)。出島表門橋架橋のための発掘調査で、タコノマクラが描かれた食器のれんげが見つかり、一般展示されることになったのがきっかけという。れんげは江戸後期の亀山焼とみられる。
 商標登録すると、権利者は出願時に指定した商品やサービスに対して登録商標を独占して使うことができ、第三者が同一か類似の商標を使用することを防ぐことができる。れんげが市民の目に触れ、他者が先に商標登録する事態になれば、同町の自治会や商店街が紋章を使えなくなるとして、同町自治会が2017年7月31日に特許庁に出願、18年4月13日に登録された。
 江戸町は「江戸のように繁盛してほしい」という思いから名付けられたというのが通説。ところが現在は「県庁が移転したことで、特に飲食店が打撃を受けている」と川添会長。三瀬さんは「タコノマクラも町おこしの手段の一つにできれば」と語った。

タコノマクラが描かれたれんげ(長崎市出島復元整備室提供)
長崎くんちの江戸町の演し物「オランダ船」に掲げられたタコノマクラ(江戸町自治会提供)

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