<外来リス問題>個体数に応じた対策が必要 森林総合研究所九州支所 安田雅俊氏 

 根絶の兆しが見えない長崎県五島市内のクリハラリス。解決策はあるのか。調査について技術指導をした森林総合研究所九州支所の安田雅俊・森林動物研究グループ長に聞いた。

 -調査結果から、どのような対策を打つべきか。

 高密度で生息する鬼岳周辺で、わなの数を増やしたり、リスが好む餌を使用したりして効果的に捕獲し、個体数を減らす必要がある。昨年度までわなが人の行きやすい場所に偏って設置されていたため、均等に配置することでも効果が高まる。今回新たに生息が確認された地域でも早急に排除するべき。捕獲従事者に分布情報を提供し、追加調査を行うことも求められる。

 -根絶に向けたポイントは。

 「なるべく早い時期に、増えるよりも多く減らす」ことに尽きる。クリハラリスには捕獲が最も効果的。外来種対策は借金返済のようなもので、1年間の個体数の増加率が、借金の年利にあたる。利息を上回る金額を返し、継続的に元本を減らす。対策が遅れると借金(リスの数)が増え、手の打ちようがなくなる。

 -根絶は可能なのか。

 やってみなければ分からない。まずは五島市だけでなく、県や国、農協などが連携して協議会をつくり、個体数や分布状況、防除の効果など毎年の変化について情報交換や議論をするべき。例えば、リスの密度が高いうちは報償金制度が有効だが、数が減り捕獲しにくくなると誰もわなをかけなくなる。そこで途中から捕獲従事者を雇用し、捕獲数にかかわらずわなをかけ続ける体制に切り替えるなどの判断が必要になる。
 熊本県ではそうした点を踏まえて集中的な捕獲事業を8年間続け、根絶を目指せるレベルにまで数を減らした。この成功例は参考になる。行政や住民が専門家を交えて事業計画を立て、十分なコストをかけて対策を継続することが重要だ。

安田雅俊氏

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