「曽祖父の思い 僕が継ぐ」 小学生の原田君、紙芝居で反核平和訴え

 広島と長崎で原爆に遭った二重被爆者の故山口彊(つとむ)さんのひ孫で長崎市立西城山小6年、原田晋之介君(11)が24日、曽祖父の被爆体験を伝える紙芝居を同市で上演した。山口さんが訴えた核兵器廃絶と世界平和。「ひいおじいちゃんの思いを僕が引き継ぐ」。小さな胸に、そんな願いと決意を抱いて。
 山口さんは1945年8月6日、出張先の広島で被爆。故郷長崎に戻った翌日再び原爆に遭った。晩年は語り部として核兵器廃絶を訴え、2010年1月、93歳で生涯を閉じた。
 山口さんの孫で被爆3世の原田小鈴さん(43)=長崎市=が、11年から祖父の体験を講話したり紙芝居で伝えたりする活動を始め、長男晋之介君はそばでそれを見ていた。
 「晋之介君も挑戦してはどうか」。小鈴さんの知人からそう勧められ、晋之介君は「うん、いいよ」と快諾。不安もあったが、学校で友達と何十回も練習を重ね、今年3月、長崎市であった平和イベントで初上演。今回、同市松が枝町のナガサキピースミュージアムで開催中の写真展に合わせて披露した。山口さんの過酷な被爆体験と平和への思いを朗読し、会場の拍手を浴びた。
 小鈴さんは「語り部をこれから続けていくのか、それは本人が決めること。でも、二重被爆者山口彊のひ孫だという自分のルーツを知るのは、大切なことだと思う」と話す。
 山口さんが他界した時、晋之介君は3歳。「紙飛行機を作ってもらったり一緒に散歩したりした」。かすかに残る温かな記憶。だがある時、「戦争は絶対だめ」と真剣な表情で話したことがあった。曽祖父の言葉の強さの意味が、今ようやく理解できる。
 世代を超え、受け継がれる山口さんの遺志。「曽祖父は世界に核兵器の恐ろしさを発信し、人々が平和の大切さを考えるきっかけをつくった。僕はその思いを引き継いで、多くの人に曽祖父の体験を語り、発信していきたい」。晋之介君は真っすぐなまなざしでそう言った。

紙芝居を朗読する原田晋之介君=長崎市、ナガサキピースミュージアム

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