ガイド同乗サービス 信仰、歴史 分かりやすく 平戸観光協会 構成資産など巡る4コース

 世界文化遺産登録が間近に迫った「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」。平戸観光協会は5月から、マイカーやタクシーにガイドが同乗し、平戸市内の構成資産について分かりやすく説明する「平戸キリシタン紀行」を始めた。記者も体験し、奥深い信仰の歴史に触れた。
 記者が選んだのは、マイカーを利用した3時間の「平戸の聖地と集落早分かり」コースで、料金は大人1人3800円。「平戸は歴史と風景が深く結びついている土地です」。NPO法人平戸観光ウェルカムガイドの谷川信行さん(57)が助手席に座り、崎方町の平戸港交流広場を出発した。
 約30分後、生月大橋を渡り、市生月町博物館・島の館に到着。館内は「かくれキリシタン」や江戸時代に盛んだった捕鯨に関する展示が充実している。「当時、捕鯨組織の従業員の多くは潜伏キリシタンだった。平戸藩は組織から多大な献金を受けていたから、信仰を見逃さざるを得なかった」と谷川さん。
 次は生月島東南部の「ガスパル様」へ。古い石積みの墓があり、1609年に処刑された生月最初の殉教者、ガスパル西玄可が埋葬された場所という。墓の近くから、海に浮かぶ構成資産の「中江ノ島」を見ることができた。禁教期に多くのキリシタンが処刑された聖地で、悲哀に満ちた殉教の歴史を実感した。
 最後は構成資産の春日集落に向かった。キリシタン墓地があった聖地「丸尾山」に登ると、一面に美しい棚田の風景が広がった。海沿いから山頂に向かって上っていくように棚田がつくられている。「集落を流れる春日川は豊富な水量を誇り、干ばつの際も水が枯れたことがないため、昔から棚田が保全され続けている」と谷川さんが教えてくれた。
 近くの「春日集落案内所」では、住民から集落の歴史などを直接聞けた。交流棟では、地元の女性がお茶や手作りの漬物でもてなしてくれた。温かい雰囲気が漂う場所だ。
 コースで触れたのは平戸の信仰や歴史のほんの一部にすぎない。しかし、現地に直接足を運び、風景を見ながら谷川さんの詳しい説明を聞くことで、資産の価値がよく理解できた。
 コースは4コースあり、所要時間は3時間から6時間。料金はマイカー利用で大人1人につき2750円から5950円。貸し切りタクシーやレンタカーの料金は別途。問い合わせ、予約は同協会(電0950・22・3060)。

春日集落の歴史について解説するガイドの谷川さん=平戸市春日町
道中の車窓から見た「中江ノ島」=平戸市生月町

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