DeNAドラ1東克樹、“ゲームの中の人”と対戦する野球漬けの日々が幸せ

ルーキーながら先発ローテーションの一角として活躍するDeNA・東克樹【写真:荒川祐史】

「ルーキーだから」とは言われたくない。次はないつもりで投げている

 DeNAベイスターズの2017年ドラフト1位ルーキー・東克樹投手が、期待通りの活躍を見せている。交流戦前には防御率でセリーグ投手成績のトップに立ち(6月25日現在では2.88でセ・リーグ5位)、ルーキーながら先発ローテーションを守って早くも5勝(4敗)。5月16日の阪神戦では、NPB全球団の新人投手における1軍公式戦での完封勝利一番乗りも果たした。登板中にベンチでバナナを食べる「もぐもぐタイム」も話題を呼んだ“ハマのペンギン”に話を聞いた。

――シーズンが始まって数か月が過ぎ、期待に違わぬ成績を残していますが、今の自分をどう見ている?

「一戦一戦必死に戦っていますが、ここまでは集中力が続いているなと思っています。アマチュアとプロの差を痛感して、体力的な疲れも出てくるんだろうなとは思っていたんですけれども、この2か月は自分のピッチングができているんで、気持ち的にも充実しているというのは感じています。でも、この結果に満足はしていません。まだシーズンは長いし、ここからの方が大事なんで。順位も決まってきますしね。そういう大事なところで、勝てる投手になりたいです」

――アマ時代と一番違うと感じる点は?

「必ず週に1回投げるためのメンテナンスですかね。大学時代はこの時期リーグ戦がありますが、投げない週もあったんで……。でも、確実に週に1回(ローテが)回ってくるっていうのは今までなかったので、プロ野球の大変さを感じました。ただそれと同時に、先発は週に1回しか投げないんで、その責任が重いですよね。それは大学の頃とは全く違うものです。

『ルーキーだから』とは、あんまり言われたくないというか。ルーキーだから大丈夫というつもりで投げてなくて、いつも“次はない”つもりで投げています。今年もチームでは先発投手の入れ替わりが激しいんで、結果が悪かったらすぐ(ファームに)落ちてしまうというつもりで。必死ですね」

侍ジャパン大学代表での緊張感、経験が今に生きている

――ラミレス監督は、「マウンド上でとても落ち着いている」と話していた。

「マウンドでは、自分らしいピッチングをするということだけを心がけています。点を許したり、ランナーを出塁させてしまうこともありますが、それで焦らないように」

――これまでのユニバーシアード大学日本代表(侍ジャパン大学代表)やノーヒットノーラン(大学時代に2回)の経験が生きている?

「代表で世界と戦って、金メダルを獲りにいくっていう大事な試合で投げているんで、大舞台はいろいろ経験させてもらっています。その時味わったマウンドでの緊張感は、今に生きているんじゃないかと思います。もともとメンタルは強いほうだと思いますけどね。負けず嫌いなので。

 当然、打たれたくないって気持ちでいますけど、打たれたら打たれたで、柔軟に気持ちの切り替えができていると思います。戸柱さんはじめ、キャッチャー陣の言葉が心強くて。1イニング毎でも声をかけてくださって、『大丈夫だから』『野手のみんなが打ってくれるから大丈夫』と声をかけてもらえるのが心強いっていうか、精神の安定剤みたいなものです。

 今までは、年下のキャッチャーと組むことが多かったんですけど、今は先輩方なんで心強くて。キャッチャーに任せて、僕は言う通りに投げるだけです」

食事、コンディショニング、走り方…ガラリと変わった生活

――プロ生活のリズムは作れてきた?

「もう慣れてきましたね。トレーナーさんたちにサポートしていただいているので。今までそういうトレーナーさんにちゃんとついてもらったことがないので、体の面を気遣ってくれて本当にありがたいと思います。食事もそうですし、コンディショニング、ケアの面ですね。細かいところでいったら、走り方ですね。走り方で変な力みがあったら、首元とかに違和感も出てくるんで、走り方も教えられました。とにかくこれまでと生活は変わりました。ホント野球漬けの毎日。でも、自分がやりたくてやっていることなので、幸せだなと思います」

――野球選手としてはあまり大きい体ではないと思うんですが、投球フォームなどで意識しているところはどんなところ?

「体全体を使って投げる。自分のイメージはそれですね。逆にこの身長を生かす投げ方、全身で投げるということを意識しています。手足も使いやすいし、自分でコントロールしやすいとは思いますけどね。身長が関係ないってところをアピールしたいです」

――トレーニングで気を遣うところは?

「体が硬いので、柔軟性、可動域の部分で硬くならないように気を付けています。体全体を使う投げ方なんで、硬くなったら怪我にもつながってきますしね」

バナナの「もぐもぐタイム」、まさかそこを注目されるとは…

――これまでは関西圏での生活でしたけど、初めての関東での生活には慣れた?

「まだ慣れていないところもありますけど、関東に来たかったんですよ。都会のイメージがあるじゃないですか。田舎で育ってきたんで都会に憧れるというか。たまに渋谷とかぷらっと歩くことがあるんですけど、まだ馴染んでいない感じがすごく出ているんじゃないかと。

 あとは原宿のあの通り……えーっと、あ、竹下通り! あそこに行ったんですけど、大行列をみてすごいなって、これが噂の……って思いました。オフの日は買い物にいったりもしますけど、寝ていることが多いですね。起こされなければずっと寝ていられます。アラームをかけないで寝るのが一番気持ちいい。睡眠が大事。やっぱり寝られないと疲れもたまるんで。マットもちゃんといいやつで寝ていますよ」

――バナナのことがかなり話題になりました。そこが注目されてどんな気持ち?

「アマチュア時代は、ベンチがカメラで抜かれる(そこだけ取り上げて映される)ことなんて、ないじゃないですか。自分にとっては当たり前だったことが、急にメディアで取り上げられるようになって、まさかそこを注目されるとは思ってなかったです。ベンチで食べる人ってあまりいないんですよね。(でもその姿がファンの心を射抜いた!)物珍しさじゃないんですかね(笑)」

 塚原賢治コンディショニンググループリーダーは、東の活躍の秘訣について「骨盤が固いから、そこを柔らかくした。走り方も肩が上がってしまっていたけど、それを矯正したらよくなったよね」と話す。プロ生活1年目は「野球のことで頭がいっぱい。遊んでいる余裕はないです」と話す東だが、「敵チームも含めて、“ゲームの世界にいた人たち”が目の前にいて。なんか野球大好き少年みたいになっていますね」と話す時の目は、キラキラと輝いていた。

(Full-Count編集部)

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