第26回:普通のお母さんが組織を司る時代

連日、本業である「働き方改革」「あり方改革」などのセッションが続いています。私が担当するのは管理職層を対象とした割合が多いものです。

管理職層といえば、ほんの数年前までは、大半がダークスーツを着た40代50代の男性ばかり。ところが、昨今、だいぶ変容が観られます。まず、女性が複数人、男性でも明らかに30代前半、外国人の姿も。ダークスーツ姿も少なくなり、ビジネスカジュアルを自分らしくスマートに着こなす人も増えているように見受けます。

しかも、男女・世代・国籍・キャリアなどの混在だけではなく、一様に皆、笑顔でフランクでしなやか、会話も弾む。そんな傾向が表れてきています。

従来の管理職は、的確なリーダーシップやジャッジ、強い影響力や推進力、などが求められ、実際にそれらを持ち備え、時間も労力も惜しまず務めていたことでしょう。中でも、女性管理職は、独身者や既婚者で子ともがいないキャリアウーマンタイプ、または既婚で母親ならば何でもこなすスーパーママさんタイプでしか、務まらないという風潮がありました。

2017年7月発表の「平成28年度(2016年度)雇用均等基本調査」(厚生労働省)によると、管理職に占める女性の割合は、課長相当職以上(役員含む)で12.1%(2015年度11.9%)と、微増しています。これまでは「ママで管理職」というと“スーパーママ”のイメージがありましたが、これからはいわゆる“普通のお母さん”でこそ、管理職になる可能性は高いものと考えます。

社会や時代の変化、人口動態から鑑みれば、時間やキャリアや年齢、言語、スキルなど、様々な制限を含め、それぞれの特質を活かした組織づくりが欠かせないのは言うまでもありません。となると、管理職に求められるのは、的確なリーダーシップやジャッジ、強い影響力や推進力よりも、柔軟性や想像力・マルチタスク能力など、要は人や組織を先導するよりも、伴走する力が欠かせないのです。

世のお母さんたちを観てみましょう。

洗濯機を回しながら、作り置きの料理を何品も作り、その間、子どもたちと会話をしながら、その会話の中には子どもたちへの叱咤激励や賞賛も入り、夫と共有すべき事項もコミュニケーションを取り、家族という組織の未来へと、尽力しています。その姿は実にしなやかで、斬新さも伴っています。

そして、多くのお母さんたちは言います。「家族の笑顔や元気が、エネルギーの源」と。それは、相手や周囲の変容を楽しみ、自己のモチベーションに繋げるという、違いを認知・受容し、巻き込み活かすダイバーシティに欠かせないbasisなのです。

今年3月に開催された「サステナブルブランド国際会議2018東京」。当方担当セッションで昨年に引き続きご一緒した、リクルートホールディングスサステブル戦略室室長の伊藤綾氏。彼女は、双子のお子さんのお母さんでもあります。

かつて、専業主婦も経験され、女性・妻・母として、従来型の管理職にはない、しなやかさと斬新さで、顧客にも上司・同僚・部下後輩にも伴走してきた彼女は、これからの管理職(男女問わず)のロールモデルかもしれません。(SB-J コラムニスト・山岡 仁美)

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