【片言隻句】冷静に考える

 トヨタ生産方式。後工程引き取りは「自分の手持ち在庫を極力減らす」結果をもたらす。「誘惑はあるが、要らないものはイラナイ」。これに大変苦い思いをしている方々も多い。

 スーパーに並ぶ商品をお客が選び、減った分を店側が補充する。毎日店を訪れるお客は理屈上その日の物資を調達すればよい。家での在庫は不要だ。

 それと、忘れてはならないのが「現物票」。つまり現場を管理する「カンバン」だ。

 これはそもそも「前工程の生産を平準化させる」ことが基本。鉄源などに「限りがある」ことを念頭に、どの部品をどれだけ作ればいいのか、がカンバンから分かる。生産のための情報はすべて「お客様」が握っているということでもある。

 さて、ここで重要なことに気づかないか。

 「鉄源などに限りがある」ことが基本とは、トヨタ生産方式がそもそも「物資不足=自動車の生産増」を念頭に置いているということ。「クルマが売れに売れて鉄源が不足する」。これが基本にある。

 しかし、これからやってくるのは国内の「販売減=生産減」。内需は漸減する。加えて電動化をはじめとする「100年に一度の大変化」が待ち受ける。そこでトヨタ生産方式が生きるためには何が必要か。

 考えられるのは「減産になっても生産性を上げる」仕組みづくりだろう。実際、早くからトヨタはそれに取り組んでいる。「整流化」「原価低減」など。聞くと頭痛が悪化する関係者も多いだろうが。

 冷静に考えよう。国内の「鉄鋼需要減」は、関係者がほぼ一致して予想するところ。影響のある鋼材流通では、加工業務へのシフトも進む。しかし、各社の設備投資は「仕事が減っても生産性を上げられる」スタイルになっているか。逆の姿になってはいまいか。

 「安売り商品を用意して購入を促す」過剰時代の名残のような商売は、通用しないのかも。本当に時代は変わった。

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