【新日鉄住金グループ企業の〝今〟(32)】〈日鉄住金精密加工〉油井管継手高品質、効率生産を追求 多能工化で精密加工品にも注力

 日鉄住金精密加工(本社・大阪府柏原市、社長・中村正法氏)は、新日鉄住金向けに生産する油井管継手(カップリング)が売上高の約70%を占めている。またカップリング生産で培った技術や多様な設備を生かし、各種金属だけでなくセラミックス、炭素・ガラス繊維強化樹脂などさまざまな材料の精密機械加工を手掛けている。中村社長は「新日鉄住金が開発する油井管の新商品に対応する高品質の継手をいかに効率よく、低コストで生産するかが当社の第一の課題。合わせて精密機械加工部門では、コアとなる分野を大切にしながら、ユーザーニーズに沿った新規分野にもチャレンジしてきたい」とする。

 製造拠点は、本社製造所と中津製造所(大分県中津市)の2カ所。本社製造所では外径400ミリまでの中小径カップリングを生産し、新日鉄住金和歌山製鉄所で生産する油井管とともに世界中に出荷されている。ハイエンドのカップリングに強みを持ち、VAMシリーズは、厳しい使用環境下でも管接続部の漏れを起こさない高シール性能が世界的に評価され、広く使用されている。今後はグリスなしで接続ができ、環境に優しく、作業効率の向上が図れる『CLEANWELL・DRY』に期待が掛かる。「油田の採掘が深井戸化・深海化する中、カップリングへの性能要求も年々高まっている。その要求に応えるとともに、ハンドリングが楽で現場施工性がよい新商品を効率よく生産していきたい」(中村社長)とする。

 中津製造所は、外径500ミリまでの大径カップリングを生産し、大分製鉄所光地区や名古屋製鉄所に出荷している。中津で生産するのはAPI(アメリカ石油協会)規格の一般品が中心で、世界的に競合他社が多く価格競争も厳しい。そのため中津では数年前から生産性向上対策を進めている。まず工場内に分散していたねじ切り関連の設備を集約し、レイアウトを直行化。検査設備もライン上に設置した。また表面処理工程を全自動化し省力化を図った。「これらの対策で国際的な価格競争力は徐々に上がってきている。今年度が仕上げの年」(同)と意気込む。

 カップリングは、原油価格の変動に連動し、生産が増減する。原油価格が比較的高値水準で推移している今年度は「少し上向いてきそう」(同)だが、長期的には需要に安定感を欠く。そのため同社では精密加工品事業にも注力し、安定的な収益基盤の構築を目指す。旋盤、マシニング、複合機など多様な設備と豊富な経験、ノウハウを持ち、ミクロン単位の精度を実現する手作業による仕上げ技術もしっかりと若手に伝承されている。本社では冷間圧延用ロールダイスとマンドレルなどの精密加工用工具や成形機、研磨機向けの精密機械部品を生産。中津では、クレーン・台車用車輪、土木用杭・機械式継手などを生産している。また最近では、IoTや自動車の自動運転化の進行で、半導体製造装置部品の受注が本社、中津とも増加している。「精密加工品はカップリングの生産変動を吸収するため必要であり、今後も多能工化を拡大することで生産体制を整えていく」(同)としている。

 同社は、2016年7月に日鉄住金ファインテックと日本チューブラープロダクツが合併し設立。発足後、約2年が経過し、資材の一括購入、外注の内製化、遊休設備や備品の融通などシナジーが徐々に表れている。本社の繁忙期には中津から延べ13人が応援として派遣されたが「違う職場を体験することで、若手社員のモチベーションが上がり、意識改革につながった。違う目線で見れば、まだまだ改善の余地はある」(同)とする。今後はシステムを統一し、見える化を進めていく。(このシリーズは毎週水曜日に掲載します)

 企業概要

 ▽本社=大阪府柏原市

 ▽資本金=3億円(新日鉄住金の出資比率100%)

 ▽社長=中村正法氏

 ▽売上高=73億円(18年3月期単体)

 ▽主力事業=油井管継手・油井管付帯品の受託加工および加工販売、各種の金属・材料の精密機械加工

 ▽従業員=273人(単体)

© 株式会社鉄鋼新聞社