<レスリング>【全日本選抜選手権・特集】65kg級に神童誕生! 19歳の乙黒拓斗(山梨学院大)が初優勝でプレーオフへ!

(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)

優勝を決め、全身で喜びを表した乙黒拓斗

 2020年東京オリンピックのメダル候補が、またひとり誕生した! 全日本選抜選手権の男子フリースタイル65kg級は、昨年のえひめ国体61kg級優勝の乙黒拓斗(山梨学院大)が、決勝で2016年リオデジャネイロ・オリンピック57kg級銀メダリストの樋口黎(日体大助手)を6−0で下し、初出場で初優勝を決めた。

 キッズ時代からその名を馳せてきた乙黒も、この大会の頂点はうれしかったようで、「各世代でのチャンピオンはこれまで経験がありましたが、全日本クラスは初めてだから」と目尻を下げて喜んだ。急激な成長の理由は「高校3年生の夏にけがをして、マットから約1年間、遠ざかった。その間にレスリングを見つめ直し、食事やトレーニングを見直したことが飛躍につながった」と振り返った。

 65kg級は全階級で最も有力選手が集結した階級の一つだった。第1シードは全日本選手権優勝で2014年世界7位の高谷大地(自衛隊)が座り、樋口黎、昨年の世界選手権代表の鴨居正和(自衛隊)、昨年のU-23世界選手権61kg級優勝の中村倫也(博報堂DYスポーツ)など、当日計量を機に階級を上げてきた有力選手などが一堂に会した格好となった。

 乙黒は最軽量級を目指していた時期もあったようだが、「けがをして、リハビリしている間に体が大きくなりました。当日計量に変わったので、65kg級がベストだと思っています」と、この階級で東京オリンピックを目指すことに決めたという。

決勝で樋口黎を攻める乙黒

 有力選手が固まる中で、乙黒は抜群の瞬発力に加え、スタンドからグラウンドへの連続攻撃もさえる一方、無失点とディフェンス面でも異次元の強さで勝ち上がってきた。ただ、今回の65kg級は、第2シードの米澤圭(早大)が負傷棄権し、中村も負傷で途中棄権するなど離脱者が多かった。全員がベストコンディションだったら、もっと熾烈な戦いだった可能性がある。

 65kg級のレベルの高さを乙黒はどうとらえているのだろうか。「強い人がいれば、切磋琢磨できるし、強い選手がいっぱいいるのはやりがいを感じています。世界でも活躍できるだろうし、悪いことではない」ときっぱり。「65kg級が日本のエース階級だと思っているか?」という質問にも力強くうないた。

 世界選手権(10月、ハンガリー)に出場するには7月7日に高谷大地とのプレーオフを制しなければならない。5年前、同大会を18歳で制した高谷(現在23歳)に、現在19歳の乙黒が挑戦する−。新旧神童対決の結末はいかに!?

優勝を決め、兄・圭祐(70kg級)に抱きつく。
男子フリースタイルの優秀選手賞を受賞(左端)

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