RE100加盟へのポイントとメリット

2015年に採択されたパリ協定やSDGsにより、脱炭素化への勢いは増している。その一つが国際イニシアチブ「RE100」だ。事業活動で使う電力を100%自然エネルギーにすることを宣言した企業の集合体である。国内企業では今年5月に城南信用金庫が加盟し、その数は7社となった。自然エネルギーは日本では価格が高いが、「RE100」へ参画するメリットは何か。(オルタナS編集長=池田 真隆)

RE100とは、「Renewable Energy 100%」の頭文字を取った言葉である。その名の通り、自然エネルギー100%での事業活動を行うと宣言した企業の集まりだ。このネットワークを立ち上げたのは、英国の非営利組織The Climate Group(クライメートグループ)。2014年の秋頃。翌年のパリ協定に向けて設立した。

現在は、企業へ気候変動への取り組みについて情報開示を求めるNGO CDPと連携して運営している。2018年6月時点での加盟社数は137。アップルやイケア、マイクロソフト、スターバックスなどそうそうたるグローバル企業が揃う。

国内企業では2017年4月にリコーが加盟し、積水ハウス、アスクル、大和ハウス工業、ワタミ、イオン、城南信用金庫が続いた。

日本では、民間組織である日本気候リーダーズ・パートナーシップ(以下JCLP)がRE100を推進していく団体として、The Climate Groupとパートナー協力を結んでいる。企業に気候変動の取り組みに関する情報公開を求めるCDPと連携し、RE100への加盟を後押しする。

RE100に加盟するための基準などについて、The Climate Groupでは、2017年末に規定を改訂した。JCLP事務局はRE100加盟の主な要求事項についてこう説明する。

・社会に影響力のある企業が対象:すでに加盟しているのはグローバル企業が多いが、各国で著名なブランドを保有する企業や、電力消費量が非常に大きい企業なども対象となる。中小企業でも社会への影響力があり、ユニークな取り組みをしていれば認められるケースもある。

・2050年までに自然エネ100%達成を求める:これまでは企業ごとに自然エネ100%を達成する時期を任せていたが、改訂によって2050年までに達成することを求めるようになった。(グローバルレベルでは、中間目標の設定も求められる。日本は国情に応じて中間目標設定は免除)。

・再エネ推進への政策関与の実施:日本における再エネ政策の前進へ、企業側から政策関与(提言や対話等)を行うことが求められている。

電源構成は、自然エネであれば問われない。だが、注意事項としては、固定価格買い取り制度(FIT)によって買い取られた電気については、売電したものに関しては、企業の自然エネとしてカウントされない。

なお、国際的には調達した自然エネの電源の特定が望ましいとされており、(現時点では自然エネ電源の特定が担保されていない)日本の非化石証書の扱いがどうなるかは検討が待たれる。

2040年に自然エネ100%を達成すると宣言している積水ハウスでは、FITでの住宅太陽光の買い取りが終了後、余剰電力を同社が買い取るようにしている。

ただ、審査基準は柔軟に変わるようだ。JCLP事務局は、「時代に合わせて基準を変えていく。基準を満たすよりも、コミットメントすることと社会への発信を重視している」と話す。

一方で、国内では自然エネの価格は欧米に比べて高い。国内企業がRE100に加盟することのメリットとは何か。JCLP事務局は、「自然エネで事業を行う世界中の企業と情報交換が可能になり、脱炭素化を加速するパートナーと出会うことができる」「投資家が企業の脱炭素化への移行準備を注視し始めており、ESG投資等における評価ポイントとなる」とする。

また、「よく“メリットは何か?”と聞かれるが、世界的に自然エネが急拡大し、カーボンプライシングをはじめとする政策の導入も加速する中、何も行わない“リスク”の方が深刻」だとも話す。

■声を集約して政策提言へ

JCLPでは気候変動に関する国際会議などに定期的に出席しており、企業関係者から「安価な自然エネが手に入らない国では、工場や研究施設を建てることは考えていない」という発言もよく聞かれるという。

RE100では、加盟企業の声を集約して政策提言へとつなげる動きがグルーバルでは起きている。国内でも同様の展開をしていきたいとJCLP事務局は話す。

今後、RE100を起点に脱炭素化を日本でどう推進していくのか。JCLP事務局は「自然エネの市場規模が増えるほど、価格は下がり、政策にも反映されていく」と見る。自然エネの市場規模を拡大するためには、「需要側が声を上げない限り、供給側は盛り上がらない」と断言する。

企業が自然エネに切り替えることを、「理念やブランディングのためだけではなく、ビジネスをしていく上でのメリットととらえられるような状況に変えていきたい」と力を込めた。

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