これからは変革的リーダーシップが求められる

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6月4-7日、2000人を超えるサステナビリティの実践者、ブランド戦略家、製品やサービスを生み出すイノベーター、新時代を築いていくリーダー、そしてチェンジメーカーがSBバンクーバー2018に集まり、世界中のビジネスを加速させるさまざまなアイデアを共有した。ここで、さまざまな変化を起こしていく上で核となる、変革的リーダーシップ論について掘り下げたい。(翻訳=梅原洋陽)

未来のリーダーの姿

2人のカナダ人と1人のイギリス人が、これから20年先のリーダーシップ論について議論したものをまとめたものが、『オール・イン:これからのビジネスリーダーシップ( All In: The Future of Business Leadership )』だ。

著者である、コンサルティング会社GlobeScanのCEOであるクリス・コルター氏やSustainAbility理事のマーク・リー氏、そしてクランフィールド大学で「CR(企業責任)」の授業を教えているデイビッド・グレイソン氏の3人が新刊本の紹介をした。著者達のメッセージは、複雑で混沌とした時代に最も重要な要素はリーダーシップであり、リーダーのあり方は時代と共に変化しているということだ。

この本は、過去20年間のリーダーシップ研究から、特に50社のリーダーシップを分析している。過去や現在のリーダー達にインタビューを実施し、3つの時代に分類した。

1.1997-2005年は「ハーム・リダクション(危害の削減)の時代」。ダウ、BP、3Mといった大企業のリーダーは、「害を及ぼさない」というアプローチを重視した。

2.2006-2015年は「戦略的統合の時代」。GE、インターフェース、マークス&スペンサーといった企業のリーダー達は戦略を立て、経営を統合していく。

3.2016年から現在は「パーパス・ドリブンの時代」。イケア、ナチュラ、テスラなどの企業は、「パーパス(存在意義)と合致しているか」で意思決定を行なっている。ちなみに、ユニリーバは、すべての時代においてリーディングカンパニーとして扱われている。

著者らは、さまざまな要素を全て統合することが重要だとする「すべてを兼ね備えたリーダーシップ」を提案している。今後のリーダーシップに必要な要素は 「パーパス」「プラン」「 文化」「コラボレーション」 、「アドボカシー」の5つだ。

「以前は、1つか2つの領域で秀でていればリーダーになれたが、今日の世界ではすべての要素が求められる」とグレイソン氏は言う。最も根本的な要素はパーパス、プランそして文化である。パーパスが根幹にあり、それをもとにプランがつくられ、文化が育まれる。コラボレーションは現状を超え、さらに目標に近づくためには必須である。そして、アドボカシーは最も新しい要素だ。

「これらの要素はそれぞれ独立しているとはいうものの、同じレベルで成熟している訳ではありません。アドボカシーが恐らく最も発展途上でしょう。ロビー活動ではないのです。アドボカシーとは、団体の利益を追求しながらも、システム・チェンジを目指すことです」とリー氏は説明した。

著者達は「オール・イン」がビジネスの成功を約束する魔法の法則だと言っているのではない。そのような法則は今まで、そして今後も存在しないだろう。このフレームワークが成功する確率を一番高めると主張しているのだ。コルター氏は「過去20年間に渡り我々が分析して来たピラミッドの頂点にいた企業の情報を押し下げ、広めて行くことが重要だ」と語った。

ダノン:変革的リーダーシップの現場

エマニエル・ワールゴン氏

ダノンの広報・ビジネス・サステナビリティ統合部門のシニア・バイスプレジデントである、エマニエル・ワールゴン氏のプレナリーは、聴衆にとって羨ましいものであったろう。

ダノンは自然派の製造業者として世界一のシェアを誇るが、同社のサステナビリティのビジョンもまたそのシェア並みに大きいものだった。

ワールゴン氏は、ダノンの2030年の目標はサステナビリティ部門のプランではなく会社全体のプランだと語った。信用を勝ち取り、パーパスと信頼性を与え、顧客を巻き込み、食品業界での革命のリーダーを目指すと説明した。

ダノンがどのように組織を変容させているか、組織の内側を見せてくれた。例えば、Bコーポレーションの認証を得たこと、砂糖や遺伝子組換作物を減らす取り組みや、世界規模での父親の育児休暇の奨励などの職場改革の取り組みだ。

[米サステナブル・ブランド編集部]

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