【三井物産スチール新部門長に聞く】〈自動車・電磁鋼板部門・中本光俊常務〉「事業アセット」を良質化

アルミなど、ゲスタンプ社とシナジー

©株式会社鉄鋼新聞社

――4月1日、商品部門が再編され、新たに「自動車・電磁鋼板部門」が誕生。初代部門長に就任しました。

 「自動車鋼板と、従来はトランスフォーマ向けの方向性電磁鋼板が主体であった電磁鋼板事業を合体し、新たな組織とした。電磁鋼板は今後、自動車の電動化が急速に進み、ハイブリッド車やEVが増える中で無方向性電磁鋼板の需要が急速に増えてくると見込まれる。当部門はモビリティー事業領域を包括的にカバーする形としており、2事業のシナジーを追求していきたい」

――グループ内を見渡すと、大手町にある三井物産本体が自動車部品事業を主管しています。役割分担は。

三井物産スチール自動車・電磁鋼板部門・中本常務

 「三井物産スチールは鋼材トレーディング機能を主体としているが、自動車領域の商品主管部として三井物産本体(鉄鋼製品本部自動車部品事業部)が有する自動車部品大手であるゲスタンプ社への出資事業、さらに三井物産の持つ海外拠点を最大限利用し、現地のお客様へのサービス向上に取り組んでいる」

――海外の加工拠点は。

 「三井物産グループとして、グローバルでみた自動車・電磁鋼板関連の加工拠点は約50工場。北米でのニューコアとの合弁事業であるスチール・テクノロジー、中国の宝武鋼鉄集団との合弁事業である宝井事業、インドのプネ地区におけるマヒンドラとの合弁事業、ロシアでのセベスタールとの合弁事業、ブラジルでのゴンバリ・アルセロールミッタルとの合弁事業のほかタイ・インドネシアにも保有。電磁鋼板ではカナダとオランダに電磁鋼板専用加工センターを保有している」

 「自動車部品の中核として全世界100カ所以上の製造拠点を持つゲスタンプがある。ゲスタンプは自動車軽量化対応で需要が世界的に高まっているホットスタンピング分野に強くグローバル供給体制を構築しており、最近はアルミ加工に注力。そうしたゲスタンプの製造拠点も当社のネットワークに入る。中国およびブラジルでは自動車部品メーカーのヨロズとの合弁事業も手掛ける。それらの鋼材加工センターおよび自動車部品事業とのシナジー創出により、三井物産本体との一体経営を強化することで、2020年度に掲げている三井物産スチールの利益目標(純利益50億円)に貢献していきたい」

――4月に国内の自動車関連および電磁鋼板関連のビジネスを、日鉄住金物産に譲渡しましたが、何がメーンのビジネスとなっていますか。

 「国内の一部を除いた自動車分野と国内の電磁鋼板分野のビジネス、さらに一部アジア地域の自動車鋼板のビジネスを日鉄住金物産に譲渡した。海外ビジネスの大半は当社が引き続き担っていく」

――新たな体制のもと、部門の課題は何ですか?

 「単純なトレードに留まらず、自動車鋼板・電磁鋼板分野において、当社機能を発揮すべく、これまでにサプライチェーン、バリューチェーンを構築してきた。事業環境が変化する中で、地域ごとの市場動向も見ながら事業アセットの良質化を進め、さらなる機能強化を図ることが課題だ。質を高め、より付加価値の高いサービスを提供できる形を目指す。そのためにはお客様、材料供給元である鉄鋼メーカー、当社との三位一体で取り組み、バリューチェーンの拡充を図りたい」

――自動車業界では100年に1度の変化が起きています。

 「ハイブリッド車やEVなど、電動化は急速に進むとみている。アルミ主体にマルチマテリアル化のトレンドにも対応する」

――具体的には。

 「電磁鋼板に関しては電動化対応で無方向性高級電磁鋼板市場の開拓が大きな課題。自動車分野では既存のアルミ材料のビジネスを拡大することに加え、日欧米と多くの自動車メーカーに取引実績のあるゲスタンプとのシナジーを強化する。ゲスタンプは自動車メーカーと共同開発を推進する過程で、お客様からさまざまなニーズが寄せられている。日本における初の製造拠点である松阪工場(三重県)は現在、本格稼働に向けた試運転を行っている」

――総合商社系としての強みは。

 「マルチマテリアル化では、三井物産本体のベーシックマテリアルズ本部(化学品)および、非鉄金属を手掛ける金属資源本部との連携が生きてくる。リース・ファイナンス、法務対応など三井物産本体の持つコーポレート部門の機能もフル活用し、総合的・複合的なサービスを提供したい」

――人材育成については。

 「当部門には40人強が在籍している。三井物産の海外拠点への出向経験なども通じ、若い世代の人材育成に注力していく。現場力、コミュニケーション力、人間力を鍛えることが大事だと考えている」(一柳 朋紀)

 プロフィール

 93年にタイのコイルセンターに出向して以来、25年にわたり自動車ビジネスに携わった。海外駐在はタイのほかに英国に2回で計14年。2度目のロンドンは欧州・アフリカ・中東地域の鉄鋼製品本部長を務め、エネルギー、インフラ事業領域にも視野を広げた。体を動かすことが好きで40代はサッカーやフットサル、スキーを楽しんだ。週末はドライブ、読書、観劇などを楽しむ。家族は夫人と息子1人。

 中本 光俊氏(なかもと・みつとし)1985年(昭60)東大文卒、三井物産入社。2010年三井物産スチール自動車鋼材部門副部門長、13年執行役員に就任。15年欧州三井物産副社長兼欧州・アフリカ・中東鉄鋼製品本部長。18年4月から現職。1961年2月6日生まれ、57歳。東京都出身。