金正恩氏「堪忍袋の緒が切れた」ドロボー兵隊集団に厳罰

北朝鮮では最近、通信ケーブルや電線の盗難が相次いでいる。当局はいつものように厳罰を持って対応する方針を示したが、同様の犯行は一向に減る気配がない。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

両江道(リャンガンド)の情報筋によると、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)第12軍団のある部隊の兵士たちが、「政府線」と呼ばれる通信ケーブルを切断しようとしていたところを、張り込み中の機動巡察隊に逮捕された。

政府線とは、首都平壌の政府機関から地方政府を結ぶ通信ケーブルだが、銅製で売ればかなりの儲けになることをよく知っている兵士たちが、常習的に盗んで売り払っていた。

北朝鮮軍の規律は地に落ちており、部隊内では窃盗や性的虐待が横行している。金正恩党委員長が核開発に突き進んだのも、それが理由のひとつと思われる。

北朝鮮軍の兵士たちは国から食糧配給がまともに受け取れないため、餓死を免れるために民家や農場を集団で襲撃し、「馬賊」として恐れられている。国内だけでは飽き足らず、国境を越えて中国に忍び込み、強盗殺人を犯す者すらいる。

北朝鮮では農村部を中心に窃盗が多発しているが、保安署(警察署)は兵士が盗みを働いても、権限がないため手が出せない。

しかし、今回は事件の重大さから、朝鮮人民軍の総政治局が乗り出し、容疑者のみならず上官にあたる部隊の指揮官と政治責任者も処罰を受けた。

今回の事件は、一般のケーブルではなく政府専用のものだったため、「朝鮮労働党の神経を切る行為」とみなされ、金正恩体制を脅かす政治犯とみなされるかもしれないと情報筋は見ている。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、生活に困った人が銅製のケーブルや電線を切断して売り払う事件は頻発しており、カネにさえなるなら何でもやるという人が少なくないという。

政府は「送電線、通信線の切断は反逆行為だ」と、幹部や一般住民を対象にした政治講演会で伝え警戒心を高めようとしているが、あまりうまく行っていないようだ。

「当局はチュチェ(主体)思想教養を行うと同時に、司法機関に対して事件の再発防止のために夜間パトロールと張り込みを命じたが、一向に減る気配がない」(情報筋)

一般住民は「電線を切って売り払うなんて、どれだけ困っているんだろうか」と犯人に同情している。これでは通報する者もほとんどいないだろう。結局、生活改善という根本的な原因が解決しない限りは、小手先の防犯対策を行っても意味がないということを、北朝鮮国民は見抜いているのだ。

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