選手を入れ替えても落ちなかったクロアチアの力
ナイジェリア、アルゼンチン、アイスランドが必死に決勝トーナメント進出を懸けて戦う中、2連勝で勝ち抜けを決めているクロアチアだけは最終節に臨む姿勢が違った。ラキティッチやマンジュキッチ、レビッチ、ロヴレン、ヴルサリコなど一部の主力をスタメンから外してアイスランドとの一戦に挑んだ。
しかし、それでも今のクロアチアはボールを支配できてしまう。モドリッチ、コバチッチ、バデリで構成される中盤で華麗にボールを支配し、20分あたりまでは70%を超えるポゼッション率をキープ。アイスランドは20分までシュートを打つことができず、最初のシュートらしいシュートは30分にシグルズソンが放った直接フリーキックだ。
ところがここから状況は変わる。アイスランドはクロアチアの縦パスに厳しく圧力をかけるようになり、中盤でボールを引っかける機会が増加。そこから速攻を仕掛け、お得意のロングスローやコーナーキックに繋げていく形から前半だけで計7本のシュートを記録している。
しかしゴールネットを揺らすことはできず。クロアチアは前回のアルゼンチン戦から最終ラインを総入れ替えしたにも関わらず、守備が大きく乱れない。中盤の層が厚いことは大会前から分かっていたことだが、クロアチアは最終ラインの層も厚いことを証明するゲームになったと言える。
焦りを見逃さず、クロアチア土壇場で決勝点
前半をスコアレスで折り返すと、クロアチアが後半早々にゲームを動かす。53分、ビバリッチのクロスが相手に当たってこぼれたボールに中盤から上がってきたバデリが巧みに合わせて先制した。勝ち点3獲得へ苦しくなったアイスランドだが、出来ることは自分たちの戦い方を貫くのみ。失点の直後にはロングスローからインガソンのヘディングシュートが相手GKを襲い、それで得たコーナーキックから再びインガソンがヘディングシュートを放つと僅かにゴール上へ。アイスランドらしい体を張った猛攻だったが、少々運がなかった。
アイスランドの攻撃が実を結んだのは76分だ。左サイドから上げたクロスを途中出場のロヴレンが腕に当ててしまいPK。これをG・シグルズソンが豪快に蹴り込んで同点に追いついた。もう一方のアルゼンチンとナイジェリアの一戦では、アルゼンチンが勝ち越しゴールを決めて2‐1リードする展開に。アイスランドが勝利すれば、得失点差で2位に入ることが可能になっていた。ところが、勝ち点3が欲しいとの焦りがアイスランドらしくないプレイを招いてしまった。後半AT、繋ぎたいとの思いからか中盤でボールをキープしようとしたグンナールソンがボールをロストし、そこからペリシッチが持ち込んで左足でゴールネットを揺らす。土壇場でクロアチアが勝ち越し。本来のアイスランドならセーフティに前線へ蹴っていたはずだが、最後に焦りが出てしまった。
[スコア]
アイスランド代表 1-2 クロアチア代表
[得点者]
アイスランド代表:G・シグルズソン(76)
クロアチア代表:バデリ(53)、ペリシッチ(90)
文/冨田 崇晃
theWORLD211号 2018年6月27日配信の記事より転載