はやぶさの道

 そのすごさと言ったら途方もないという。7月末、地球に大接近する火星では近ごろ、かつてない規模の砂嵐が起き、星を覆い尽くすほどらしい▲米国の無人探査車の一つが、火星で音信不通になった。押し黙る探査車がすさまじい嵐に耐え忍ぶさまを思い浮かべて、つい「踏ん張れ」と内心でつぶやく。火星探査とは何の関わりもない身でありながら▲宇宙で稼働する探査機の類いは、長いこと、こつこつと、孤軍奮闘している感じがする。だからなのか、つい人になぞらえ、声の一つも掛けたくなる。エンジンは故障し、通信は途絶え、苦難の末に2010年、7年ぶりに地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」は、その忘れがたい例だろう▲大気圏に突入後、小惑星の微粒子をカプセルに残し、本体は燃え尽きた。もちろん地上のスタッフの努力による帰還だが、最後の力を振り絞るように見えた「はやぶさ」の姿に目を潤ませた人は少なくあるまい▲探査機「はやぶさ2」が小惑星りゅうぐう上空に達した。32億キロという宇宙の長旅はほぼ順調で、「はやぶさ」で続発したエンジンの不具合を技術者が改良した結果という▲りゅうぐうを調べれば太陽系の成り立ちに迫れるらしい。苦難の旅人「はやぶさ」が敷いた道の先に成功あれ。と、人になぞらえずにはいられない。(徹)

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