新幹線の佐賀負担「試算より軽減」 長崎県、貸付料などに期待 県議会総務委

 定例県議会は28日、総務、文教厚生、環境生活、農水経済の4常任委員会を続行。総務委は、九州新幹線長崎ルートの新鳥栖-武雄温泉間をフル規格で整備した場合の「佐賀県の実質負担」を巡る論議に時間を割いた。佐賀県は同区間の同県の追加負担を2千億円と試算しているが、長崎県の幹部や県議の間では「もっと低い」との見方があり、長崎県はJR側が負担する施設使用料(貸付料)による負担の大幅軽減に期待をにじませる。
 「佐賀県の真水(実質負担)はいくらか。試算していないのか」。小林克敏委員(自民・県民会議)がこうただすと、柿本敏晶企画振興部長らは貸付料収入などで佐賀県試算より「相当程度軽減される」と答弁したが、具体的な数字は示さなかった。
 整備新幹線の建設費は法に基づき、JR各社から建設、施設保有主体の鉄道建設・運輸施設整備支援機構に支払う貸付料収入を充て残りを国が3分の2、地元自治体が3分の1ずつ負担する。佐賀県は、フル規格なら新鳥栖-武雄温泉間の追加負担は2千億円とする試算を与党検討委に示した。しかし、試算には貸付料と、後年度に国から充当される交付税措置は考慮していない。
 国土交通省は全線フル規格整備なら追加費は6千億円で、JR九州の収支改善効果は年88億円と試算。貸付料はJR側が同機構との取り決めで開業から30年間支払う。6千億円から収支改善効果を参考に決められる貸付料の充当分を差し引くと、国と地元負担分は小さくなる。さらに地元負担分は交付税措置を受けられ、実質負担は55%となる。これらを考慮すると、佐賀県が試算した2千億円よりは、相当程度軽減される可能性がある。
 長崎県はこうした期待を抱きながらも「貸付料は法令に基づき、全国の整備新幹線の事業に充てられる仕組みになっており、必ずしも長崎ルートだけに使える仕組みになっていない」と説明。「貸付料の額はJR九州と国交省が協議することになる」とみている。
 実際、佐賀県の大幅負担軽減に向けた道のりは険しい。JR九州の青柳俊彦社長も26日の定例会見で、「われわれからお金を出すという話はできない」と強調。佐賀県の担当者も取材に「貸付料や交付税措置を考慮すれば安くなるのは分かっているが、試算は負担感を出したかった」と説明。依然として追加負担に難色を示している。

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