実名公表「堂々と闘う」 強制不妊提訴の渡辺さん 国に怒り会見で決意新た

旧優生保護法をめぐる提訴後の会見で思いを語る渡辺数美さん(中央)=28日、熊本市中央区

 「顔も実名も公表し正々堂々と闘う。国は真剣に向き合って」-。子どものころに旧優生保護法下で不妊手術を強制されたとして28日、国に損害賠償を求めて提訴した県内在住の渡辺数美さん(73)。熊本地裁前の報道陣に、自分の顔と実名の公表を切り出し、引き締まった表情で訴状の提出に向かった。

 「親族らに迷惑を掛けたくない」として、渡辺さんはこれまで匿名で取材に応じてきた。しかし、「裁判は後ろめたいことではない」と今朝、家を出る時に実名の公表を決めたという。東俊裕弁護団長は「渡辺さんは全てをさらけ出して闘うと決めた。日本の恥部を明らかにして、償いを勝ち取る」と語気を強めた。

 弁護団によると、同法下での強制不妊手術は約50年間で約1万6500件に上る。一方、国は1996年の同法廃止後、被害者の救済をしていない。「国は私たちが死ぬのを待っていたんじゃないのか。悔しい思いをしてきた全国の被害者に、泣き寝入りしてほしくない」と渡辺さん。全国で被害者の提訴が増えることを期待する。

 提訴後、会見した渡辺さんは「長い間、恥ずかしく苦しい思いをしてきたが、今日は晴れ晴れとした生まれ変わったような気分だ。1人でも多くの被害者と共に闘いたい」と吹っ切れた様子。

 睾丸摘出によりホルモンバランスが崩れ、毛髪以外の体毛がほとんどない。胸も膨らんでいる。50代のころ、男女が水着で入る温泉に入った際、店員から胸を隠す水着を着用するよう注意された。身長の伸びにも悩まされ、成人時の約170センチから、還暦を過ぎても伸びが止まらず、現在は約190センチあるという。

 最後に「生殖機能を失わせる行為は、いくら国の政策であっても絶対に許されない人権侵害だ。このままでは死んでも死にきれない。国には潔く誤りを認めて謝罪を求める」との声明を読み上げ、裁判闘争に向けて決意を新たにした。(社会部・山口尚久、文化生活部・西島宏美)

(2018年6月29日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

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