「言葉」の大切さ知る名将 日大の監督候補に水野彌一氏

日大の新監督に「他薦」で立候補した元京大監督の水野彌一さん

 京大の元監督・水野彌一さんが「悪質な反則問題」で体制の一新を目指す日大の監督候補として「他薦」された。

 日大側が設けた公募期限である6月28日に、推薦人の名前の入った書面が日大本部に届いたという。 

 京大の監督時代は学生王者6度、日本一に4度導いた「名将」が、かつてのライバルチームの監督に名乗りを上げたニュースは波紋を呼び、賛否両論が渦巻いている。

 甲子園ボウルで苦杯をなめた日大OBには「なぜ水野さん」という戸惑いがあり、京大OBにしても母校の「象徴」のような存在が「よりによってなぜ」という思いがあるからだ。 

 今月78歳の誕生日を迎えた水野さんだが、年齢を感じさせないバイタリティーは健在だ。

 現在、立教大の「シニアアドバイザー」という肩書で学生の指導に当たっているが、日大の監督への〝立候補〟に関しては両者の間で合意しているという。 

 「日大のような立派なチームが低迷するのは、喜ばしいことではない。フットボール界の損失になる。請われればお役に立ちたい」

 水野さんは既に、日大OBからの要請を受け、選手の代表、保護者、OBらを前に指導理念を説明している。参加者からは「とても感銘を受けた」という声が聞こえてきている。 

 名監督には「名言」がつきものだ。言い換えれば、名将は「言葉」の大切さをよく知っている。

 思えば、故篠竹幹夫元日大監督も「言葉の使い手」だった。複数の関西の強豪校の関係者は言う。「日大というチームと水野さんは相性がいいと思う」 

 日大によれば、今回の公募には外国人7人を含む69人の応募があったそうだ。今後は外部メンバーで構成する「選考委員会」で新指導陣を選ぶことになる。 

 「前の指導体制では、教育的理念が欠落していた。新しい監督には、他大学や連盟の信頼を取り戻せる方が望ましい」

 29日に東京都内のホテルで行われた「日大アメリカンフットボール部における反則行為に係る第三者委員会」の中間報告記者会見で、勝丸充啓委員長(弁護士)は、こう言って「フェニックス」の再生に期待した。(47NEWS編集部=宍戸博昭)

© 一般社団法人共同通信社