男子の言動「精神的苦痛」 横浜市立中女子へのいじめ認定

 横浜市教育委員会は29日、いじめ防止対策推進法に基づく重大事態の調査の結果、市立小中学校計2校にいじめがあったと認定する報告書を明らかにした。このうち、市立中の事案は被害生徒が精神的苦痛を感じた他の生徒による行為を「学校集団生活の中ではよく起こりえる」と捉えており、感受性が高く、対応に配慮が必要な被害生徒について、学校対応を重点的に検証した初の事例となった。

 市教委は「より丁寧な寄り添いが必要な児童生徒はほかの学校にもいる。今回の事例は参考になり得る」と位置付けている。

 報告書などによると、2015年度、当時中学1年生の女子生徒が音読の声が小さかったことに対し、男子生徒から「聞こえない」と言われたり、保健室で過ごす理由を疑う発言をされたりするなどし、嫌悪感を感じた。女子生徒は大人数の前での発表や男子生徒一般に苦手意識があった。特に1~2年は心情が不安定となり、3年間で計約210日欠席している。

 同法はいじめを「児童などが心身の苦痛を感じているもの」と定義しており、報告書は女子生徒の苦痛に基づいて同事案をいじめと認定。その上で、集団生活の学校内では未成熟な生徒による不用意な言動で他の生徒が傷つく状況は「広く想定される」とも指摘した。

 調査は従来、いじめの有無や具体的な行為などに重きが置かれてきたが、今回は被害生徒への学校側の対応を中心に検証した。その結果、報告書は女子生徒が在籍した小学校からの生徒の特性などに関する引き継ぎが不十分だったことなどを指摘。クラス替えなどで配慮した結果、女子生徒は3年時は比較的落ち着いて登校できるようになった。

 このほか、市立小での重大事態もいじめと認定。これにより、調査中は10件となった。

◆市教委、再発防止策のみ公表 「保護者が望まず」

 横浜市教育委員会が29日に明らかにしたいじめ重大事態の調査結果のうち、市立小学校のケースは被害児童の保護者の意向を踏まえ、いじめの概要といった基礎的な情報が伏せられたまま公表版が発表された。公表ガイドラインはその目的を「再発防止」と定めるが、今回は市教委自らが目的達成には不十分だと認める内容にとどまる。被害者側が公表を望まない場合の公表範囲や事例共有のあり方が議論となりそうだ。

 報道陣に示された報告書などによると、2017年度、当時小学4年の女子児童が、同級生から「なんかしゃべって」などと言われたり、笑われたりした。報告書は女子児童が心理的苦痛を感じたとしていじめと認定。教職員の情報共有不足などを指摘している。

 だが、ホームページで公開する公表版は事案概要や調査結果を記さず、再発防止策がほとんどを占めた。市教委によると、保護者が公表を望んでおらず、ガイドラインが「少なくともいじめの有無および再発防止策については公表」としていることに基づき、今回の公表範囲を決めた。

 公表版は通常、市立全学校と共有し、各校のいじめ防止に役立てる。市教委は今回の公表版について「実際に何があったのか分からず、再発防止策も一般論で捉えられてしまう」としており、市立校に対しては事案概要などを補って通知。今後、共有のあり方を検討する。

横浜市立学校2校のいじめ重大事態の調査結果が報告された市教育委員会臨時会=同市中区

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