ロシアW杯!編集部が「心にグッときた」6つの代表チーム

熱戦が続くロシア・ワールドカップ。グループステージでは思わぬ波乱が起きるなど悲喜交交だった。

ここでは、各編集部員たちが心にグッときた代表チームたちを特集したい。

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モロッコ代表(編集部K)

元清掃員というエルヴェ・ルナール監督のカッコよさよ!

というのはともかく、モロッコ代表チームが見せた「サッカー文化」が印象的だった。

このモロッコ代表は、ほとんどのメンバーがベルギー、オランダ、フランスなど欧州生まれ。国内で育った選手は数名だけだ。監督もフランス人のルナールである。

しかし、彼らがやっているサッカーはまさに「ザ・モロッコ」なのである。ここしばらくはずっとこのスタイルだ。

強引な突破を得意とするウイング。溢れる闘争心。情熱的な個々人のプレッシャー。わずかでもチャンスがあるならば立ち向かい、挑んでいく。たとえ雑になろうとも、リスクがあろうともだ。

フランスやオランダのリーグでも、強引なウイングやテクニシャンが出てくるとだいたいチュニジア、モロッコ、アルジェリアのルーツを持っている選手だったりする。

それだけ、人間における「ルーツ」というのは大きなものなのだろう。育った家庭から受け継ぐメンタリティもだ。もしかしたら、海外育ちの日本人2世を集めても俗に言う「日本らしいサッカー」になってしまうのかもしれない。

穴があるからと言って今あるものを否定して、海外最先端の戦術を植え付けることがいいのか?

あるいは、時間がかかっても今持っているものをベースとした独自のサッカーを作り出したほうがいいのか?

モロッコのサッカーを見て、筆者は日本のサッカーの未来を考えさせられている。

スウェーデン代表(編集部O)

大会前におけるスウェーデン代表最大の話題は、「ズラタン・イブラヒモヴィッチがメンバー入りするのか」だった。

イブラ本人がたびたび招集について言及したことで盛り上がりを見せたが、ヤンネ・アンデション監督の態度は終始一貫していた。そして本大会でのパフォーマンスを見て、イブラがスウェーデン代表に戻れない理由を多くの人が理解したことであろう。

現在のチームは全体の統一された意識とハードワークを武器にしており、それを最大限に発揮することによりプレーオフでイタリアを破り本大会への切符を掴んだ。

そのベースは、“イブラと愉快な仲間たち”がもっとも強い結束を見せたEURO2012よりも強固なもの。代表を引退した36歳が入り込む余地など最初からなかったのだ(天才肌の10番フォシュベリがいなければもしかしたら…)。

迎えた本大会、監督の判断が間違っていなかったことを証明するように、ドイツ、メキシコ、韓国と同居した「死のグループ」を堂々1位で突破した彼ら。

個人的にもベリ、トイヴォネンの2トップなど世代別代表の頃から思い入れのある選手が多く、まだ試合は続いていくのだが今大会のパフォーマンスは胸に来るものがある。

ペルー代表(編集部H)

1982年大会以来、実に36年ぶりの出場となったペルー代表。

大会前、ゲレーロのドーピング問題が大騒動となったものの、1年半近く無敗の代表に対する期待は高く、ロシアには世界中からペルー人が応援に駆け付け会場はホームさながらの雰囲気となった。

しかしこの異様なまでの熱狂が、結果として悪い形で表れることとなった。

デンマーク戦の前半、VARで得たPKをクエバを大きく打ち上げ失敗。彼は試合中にもかかわらず涙を流してしまったのだ。

そこまで内容は完璧に近かった。しかし大舞台での信じられない失敗は、熱狂的だったファンにも伝染する。スタジアムはみるみる悲観的な空気に包まれ、案の定、カウンターから一発で失点しこれが決勝点となった。

ペルーは続くフランス戦も0-1で惜敗し2連敗。最終戦ではオーストラリアに快勝したものの、時既に遅しで大会から姿を消すこととなった。

3試合を振り返ると彼らは今大会で最も濃度の高い試合をしたチームの一つ。もし、ほんのちょっとの運があれば、大会で上位に行く力はあったかもしれない。

しかし、36年ぶりの出場による“熱狂”とそれに伴う“気負い”が、彼らを敗退へと導く結果となってしまった。

アイスランド代表(編集部Q)

人口約33万人と所沢市と同じ規模の小さな国が躍動した。決勝トーナメント進出こそできなかったが、クロアチア、ナイジェリア、アルゼンチンと3つの強豪国と対等に渡り合った。獲得した勝点1は何事にも代えがたい「1」だ。

EURO2016でも驚異の99.8%、今回のアルゼンチン代表との試合の視聴率は何と驚愕の99.6%。無骨ながらも魂を持って戦うチームを国をあげて応援した。

主将のアーロン・グンナルソンは「どれだけのサポートがあったかを示している」と高い視聴率についてコメント「0.4%の人は何があるか知らずに寝ていたに違いない」と冗談を飛ばした。

こうした小国が躍進した場合には世代交代が進まず後にボロボロになってしまうケースも少なくない。だが、アイスランドに限ってはその心配はなさそうだ。現在のメンバーは30代、20代後半、20代前半とばらけている。2011年にU-21EUROで予選突破した時ほどの勢いはないが、若い世代の選手もちらりほらりと出現している。

ヴァイキング軍団が今後どうなっていくのか、スウェーデンやデンマークのように北欧の一強豪国になれるのか注目である。

メキシコ代表(編集部I)

いきなり前回王者ドイツを沈めるアップセットをかましたメヒコ。

相手は本調子でなかったとはいえ、考えうるなかで最高の試合をやってのけたのは感動的だった。なかには風邪を引いていた選手もいたというのだから、なおさら凄い話だ。

決してフィジカルに優れてはいないメキシコだが、彼らにしかできない“メキシコ固有のフットボール”というものが確かに存在する。

ただ、現在の監督がコロンビア人だというのも興味深い。そのオソリオ監督には大会前には批判もあったというが、本大会ではそれを覆してみせた。

個人的には、DFエドソン・アルバレス(背番号21)のかわいすぎる元彼女にもグッときた!

ドイツ代表(編集部T)

「前回大会覇者が苦戦する」というジンクスは、もはやワールドカップの風物詩であり、彼らがこのような結末を迎えたことも必然だったのかもしれない。

昨年から戦術面に大きな問題を抱えていながら、それを解決する手立てを見つけられずに本大会に参戦すると、大会中にはその脆さが随所に表面化する最悪の展開に。最終的には、自分たちが信じていたはずの「効率的で効果的なプレー」は全てが裏目に出てしまい、一種の限界を露呈しながら散っていった。

無論、メキシコを筆頭に彼らと対峙した対戦国の対策や奮闘が光ったことは事実である。とは言え、今回の失態は「身から出た錆」と称するのが適切だろう。

しかし、この国のサッカーは過去に何度も頭を打ってきた歴史があり、他国に打ちのめされた度にバージョンアップに成功し、幾度となく世界一に輝いてきたことも忘れてはならない。

(本意ではなかったは言え)ロシアの地で見つめ直す機会を得た彼らが、「またここから立て直してくれる」と信じるサッカーファンは多いことだろう。

そして、4年後に訪れるであろう復活劇は必ずや「グッとくる」ものになるはずだ。

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