自然とビジネス学ぶ 鎌倉の小中学生がハチミツ商品化体験

 鎌倉の小中学生がミツバチの飼育を体験し、採取したハチミツで考案した商品を販売する取り組みが人気を呼んでいる。地元を元気にする起業家を目指す人材を育てるため、さまざまな立場の大人たちが、自然の大切さやビジネスの楽しさを教えている。企画するメンバーらは「多様な経験を通し、ふるさとの未来を盛り上げる担い手になってくれたら」と期待している。

 5月下旬の日曜日。建長寺(鎌倉市山ノ内)に、小中学生約20人や保護者らが集まった。

 養蜂家の石井秀卓さん(53)が西洋ミツバチの巣箱から木製の巣枠を取り出しナイフで削ると、輝く黄金色の液体がたまっていた。「早く食べたい!」。遠心分離機で絞り出されたハチミツをなめた子どもたちは満面の笑み。高田悠気君(9)は「甘くておいしかった」と喜んだ。

 「鎌倉こどもハチミツプロジェクト」は2015年にスタートした。小中学生の居場所づくりや地域活性化に取り組むNPO法人や団体の有志が「鎌倉の豊かな自然と教育をテーマに、子ども向けの取り組みができないか」と考え、地元の小学4年生から中学3年生までを対象に、自然環境とビジネスを学ぶ場を整えた。

 プロジェクトはおよそ1年をかけ、じっくりと取り組むのが特徴だ。鎌倉の自然やミツバチについて学習。ハチミツを生かした商品を考えるだけでなく、販売体験やマーケティング調査など実地経験も積む。“会社”の名前や経営理念なども決めた上で、11月の販売イベントに臨む。

 本年度の参加者も、インターネット関連ベンチャー「カヤック」(同市)の柳澤大輔代表取締役から「アイデアを出すことは出発点。楽しいと思ったものを信じて」とアドバイスを受け、▽野菜のハチミツ漬け▽ハチミツで味付けした唐揚げ-など商品化に向けて知恵を出し合った。

 プロジェクトの開始から参加者は徐々に増え、今は定員(20人)を超える応募がある。中心メンバーの一人、上江洲(うえず)慎さん(35)は「地域で経験の幅を広げることで、地域に愛着を持ち、より良くしようと自主的に取り組む人材を、一人でも多く育てたい」と意気込んでいる。

巣枠にたまったハチミツを確認する子どもたち=5月27日、建長寺

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