とうとう世界遺産に

 建築の素人ながらも目を奪われた。赤れんが造りの外観といい、色鮮やかなステンドグラスといい、平戸市の田平天主堂を訪ねて「荘厳とはこういうさまを言うんだろうな」と見とれた覚えがある▲その天主堂と、南島原市の日野江城跡の二つが構成資産から外されたのは2年前のこと。禁教と潜伏の時代に重きを置くべき、と国際記念物遺跡会議(イコモス)に指摘され、禁教期に信仰が守られた集落などに絞った▲地元の教会を世界遺産に-という民間の運動が始まって17年。他の候補に先を越される「まさか」があった。イコモスの指摘を受けて、政府が推薦を取り下げたりもした▲それでも、どうすれば世界遺産の道が開けるか、登録を志す人々は冷静に考え抜いた。苦渋の選択でもって価値ある二つの資産を外した。そしてとうとう「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の世界文化遺産への登録が決まった▲道のりが長かった分、県民の皆さんも、登録に尽くした人たちも感慨ひとしおに違いない。遺産の価値をいかに広め、地域の活性化につなげるか。資産をどう保護するか。道は先へと続いている▲禁教と潜伏の時代、弾圧にも屈せず、心の自由を守り抜いた人々がここ長崎県に存在したという、その歴史を守り抜くのは今を生きる私たちである。(徹)

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