変わる小浜町 大型公共工事続く 雲仙支局・中村亮介 病院、体育館 隣接地に移転 進む老朽化、埋め立て地活用

 雲仙市小浜町で、公共施設の移転、統合計画が動きだした。今月3日、国道251号沿いの埋め立て地に移転する公立新小浜病院が着工し、隣接地には小浜体育館の移転も予定されている。老朽化した市小浜総合支所、県央消防本部小浜消防署の建て替えも含めた公共施設についても本格議論が始まる。機能集約、行政のスリム化、市民生活の向上-。さまざまな目的を掲げた施設移転の課題と展望を探る。
◆平らな場所へ
 「雨でなくても、やっぱり坂道はしんどかね」。6月下旬、公立新小浜病院に続く傾斜を歩いてきた70代女性が、傘をたたみながら息を切らす。「もうすぐ下に移るとでしょ。そしたらもう少し楽に来られるかしら。通わんでよかとが一番やけどね」と苦笑する。
 同病院の病棟は1971、72年に建設された鉄筋コンクリート6階建て。築40年以上が経過し、空調機器や雨漏りの改修工事が増えるなど老朽化が進む。病院を管理する雲仙・南島原保健組合は、2015年から移転の基本構想に着手。今年2月に実施設計が完了し、今夏から工事に入り、20年春の開院を目指す。
 移転先は国道251号沿いで、現在は職員駐車場として使っている約6700平方メートルの埋め立て地。現在地からの距離は海側に約150メートルでそう変わらないが、同組合は「国道に隣接することで救急車両の出入りがスムーズになり、利便性も高まる」としている。
◆狭いアリーナ
 病院移設地の隣約9千平方メートルには、同じく老朽化した小浜体育館の移転が計画されている。病院より古く1966年に建てられた現体育館は、アリーナ部分の面積が狭く天井も低いため、バレーボールやバスケットボールの公式規格をクリアしたコート確保が困難だった。災害避難場所にもなっているが、国の新耐震基準を満たしておらず「地震の場合、そもそも体育館自体が壊れるのでは」とやゆする声もあった。
 市北部には公式規格に準拠した吾妻体育館(吾妻町)などがあるものの、南部には小中学校の体育館があるだけで代替施設はない。市は地元自治会、大学教授らでつくる建設検討委をつくり、建て替え場所や機能などの意見を聴取。交流スペースとしても使える多目的ホールも備えた施設として、移転新築する方針を打ち出した。
 今年4月、小浜町であった住民説明会には約30人が参加。住民からは「コーラスなど文化サークルの練習にも使えるようにしてほしい」「病院と隣り合うが騒音は問題ないのか」などの意見が上がった。市はスポーツ団体などからも意見を聞きながら、本年度中に基本設計をまとめる方針。2021年夏に完成予定だ。
 両施設の移転場所は、旧小浜町時代の埋め立て地。20年以上空き地だったが、ようやく利用のめどがついた。現体育館近くに住む新町自治会前会長の森田勝二さん(78)は「病院、体育館が新しくなることは大変喜ばしい」と歓迎する。一方で、現在地と移転先の間には公民館や市が管理する「国民宿舎望洋荘」、プールがある運動施設「リフレッシュセンターおばま」もある。「跡地は駐車場と聞いているが、それだけじゃ寂しい。市にはもっと踏み込んで、これらの施設と連動した活用策を求めたい」と注文を付けた。

◎支所、消防署 本年度中に基本構想 「市民の利便性最優先」/機能集約へ議論本格化

 「何でんかんでん小浜ばっかりつくって、て言われんやろか」と、雲仙市小浜町の住民。山あいをへだてて南北に延びる同市では、道路や公共工事のたびに南北格差を気にする場面に、しばしば出くわす。
 病院や体育館はめどがついたが、1972年建設の小浜消防署と市小浜総合支所庁舎(75年建設)の建て替えも待ったなしの課題だ。34年に建てられた小浜公会堂など、さらに古い施設もまだ残っている。
 市は数年前から同消防署の改修を議論してきたが、小浜総合支所との着工順位などがネックとなり、結論は出ていない。ただ、どちらも築40年を超え、時間的余裕は少ない。このため市は本年度、公共施設の建て替えを部局間の垣根を越えて議論する場を設置。本年度中に基本構想を示す方針だ。
 構想では、公立新小浜病院や小浜体育館も含めた10を超える小浜町の公共施設について、機能の集約や統廃合の方向性を議論する。具体的には、同町文化館にある図書館、会議場や武道場として使われる小浜公会堂の活用、各地区にある公民館の機能集約などを一括して検討していくという。
 庁舎整備について、近隣自治体ではどう対応しているのか。
 島原市は3月、新庁舎を着工した。雲仙・普賢岳噴火災害や熊本地震の教訓を基に、耐震性と災害対策室の拡充といった防災機能を強化。2020年に業務開始予定だ。諫早市は8年前に本庁舎を建て替え、周辺施設に分散していた機能を集約。旧庁舎跡地は現在、駐車場と公園として活用している。
 南島原市では今春、市口之津支所とフェリー発着所を集約したターミナルビルの建設が始まった。支所機能に加え、観光案内所なども併設する。大村市では、西大村出張所、中地区公民館、高齢者施設の中地区ふれあい館の3施設をまとめた新公民館の建設計画が進み、20年度の供用開始を目指す。
 いずれも、耐震化への対応や機能集約といった課題を抱える雲仙市にとって参考材料になりそうだ。
 同市の広瀬章文総務部長は「人口減少に対応するには施設の統廃合と跡地活用を進め、スリム化していく必要がある。最も大事なのは市民の利便性」と話す。
 冒頭の「市民の声」をぶつけてみた。広瀬部長は「消防署移転と結果的に同時になってしまったが、小浜一帯をどうするかの青写真を描くきっかけにもなった。早急に議論を進めたい」。カレンダーに目をやり、残された時間を確認した。

病院、体育館予定地
海岸沿いに移転する公立新小浜病院と小浜体育館の建設予定地=雲仙市小浜町
老朽化が進む小浜消防署=雲仙市小浜町

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