「潜伏キリシタン」世界遺産決定 悲願の登録 地元歓喜 中継見届け拍手と歓声

 バンザーイ。あちこちで歓喜の笑顔があふれた。「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の世界遺産登録が決まった30日、県庁と構成資産がある地元の市町ではパブリックビューイングがあり、計1600人以上が審議を見守った。登録が決まると、各会場の喜びは爆発。紆余(うよ)曲折を経ての悲願の登録だけに、関係者や市民は地域活性化へ期待を膨らませ、文化の継承に決意を新たにした。
 「よーし」「やったぁ」-。「原城跡」がある南島原市。約200人が詰め掛けた有家町のありえコレジヨホールでは登録決定直後、銀色のテープが飛び交い、割れんばかりの拍手と歓声が起きた。観光ガイドたちは抱き合い、市職員は感極まって涙ぐんだ。
 市立布津小3年の下田寧々さん(8)は「大勢の人と一緒にお祝いして楽しい。私も古里の歴史のすごさを観光客に伝えたい」とにっこり。市商工会女性部長の伊埼美代子さん(68)は「市民一人一人が盛り上げに貢献しないと。受け入れ態勢を充実させたい」と気を引き締めた。
 約350人が集まった県庁舎。バーレーンの審査会場から中村法道知事がインターネット電話で「応援ありがとうございました」と満面の笑みを送り、国会議員や県幹部らがくす玉を割って祝った。歌手のタナカハルナさん(29)はこれまで特集テレビ番組への出演や自作の歌で同遺産をPRしてきただけに感無量の様子。「苦しんで亡くなった信徒たちの思いが450年も受け継がれて今日につながった。すごいですね…」と目元を拭った。
 平戸市生月町博物館・島の館に集まったのは約80人。生月・山田地区のかくれキリシタン信者5人が着物とせった姿で、島に伝わる唄オラショ(祈り)を唱えた。その一人で市生月支所長の舩原正司さん(56)は「先人が信仰を続けてきたからこそ世界遺産になれた。継承が難しくなっているが、変わらず続けたい」と決意をにじませた。
 「奈留島の江上集落」がある五島市奈留町。奈留離島開発総合センターには全島民の約1割に当たる200人以上が詰め掛けた。クラッカーが鳴り響き、うどんが振る舞われた。くす玉を割った奈留小教区代表の葛島幸則さん(65)は「当初、信徒には反対の声も多かった。これから信徒や地域の人と協力して教会を維持し、島の活性化につなげたい」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。
 新上五島町有川郷の鯨賓館ホールの300席は満席で、立ち見の人も。町内の「頭ケ島の集落」の登録が決まると、江上悦生町長は来場者とハイタッチ。マイクに向かい「信じてはいたが興奮している。最高の幸せ」と声を弾ませた。
 構成資産「野崎島の集落跡」がある北松小値賀町。笛吹郷の町離島開発総合センターには200人以上が来場。小中高生計3人が「世界遺産を継承していく」と力強く宣言した。
 「黒島の集落」の佐世保市黒島地区公民館には約60人、同市中心部の中央公民館にも約180人が集まった。両会場をテレビ映像で結び、喜びを分かち合った。黒島地区自治協議会長の濱田次義さん(66)は「感激した。(推薦取り下げから)やり直したかいがあった」と感慨深げだった。
 長崎市東出津町の市遠藤周作文学館では約120人が喜びに沸いた。構成資産内にある旧出津救助院を運営する一般社団法人「ド・ロさまの家」理事長でカトリック信者の川田正勝さん(82)はこう誓った。「いよいよ私たちのふるさとが世界遺産に登録され、心から感謝している。地域は高齢化が進んでいるが、みんなで力を合わせて末永く維持していけるよう頑張りたい」

世界文化遺産登録が決まり、くす玉を割って喜ぶ関係者=30日午後6時3分、県庁
唄オラショを披露する生月町山田地区の住民ら=平戸市、市生月町博物館・島の館
お祝いセレモニーの記念撮影で写真に納まる市民ら=南島原市、ありえコレジヨホール
審議の様子を祈るように見守る市民ら=五島市、奈留離島開発総合センター
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