「潜伏キリシタン」世界遺産決定 世界から称賛の嵐 知事「全ての人に感謝」

 30日午後5時50分、登録決定を伝える木づちの音が議場に鳴り響いた。「全ての皆さまに心から感謝したい」。各国からの“称賛の嵐”に、中村法道知事ら関係者は一様に満面の笑みを浮かべた。
 潜伏キリシタン遺産の審議は「異例の展開」(政府関係者)に。委員国の全21カ国が意見陳述を希望。最初のスペインは国際記念物遺跡会議(イコモス)と連携して仕上げた推薦書の出来を評価した。反対意見がないとみた議長は審議を切り上げようとしたが、なお12カ国が発言を求め、日本代表団に賛辞を送った。
 代表団席で審議の行方を見守った中村知事は「イコモスから登録勧告をもらっていたが多少の不安もあった。多くの国に支持をいただき、大きな喜びでいっぱい」と感激の表情。「今後は資産の本当の価値を知ってもらえるよう努力していきたい」と力を込めた。
 長崎市の田上富久市長はいったん推薦を取り下げた経緯に触れ、「遠回りした分、より世界に価値が伝わった」。審議中は手元のタブレット端末で市内のパブリックビューイング会場の様子も確認。「市民と一緒に喜びの瞬間を共有できてよかった」と相好を崩した。
 長年、県の担当者と共に推薦書作成に取り組んできた文化庁の鈴木地平文化財調査官は「推薦内容の見直しで除外された資産もあり、地元の人に苦渋の決断をしてもらった。成功の陰に、さまざまな痛みがあったことも忘れてはいけない」と声を詰まらせた。

審議終了後、報道陣に喜びを語る中村知事(中央)ら=バーレーン、マナマ市内のホテル

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