想定外の2発でフランスに試練
これが決勝トーナメントの戦いなのか。フランス代表とアルゼンチン代表の一戦は世界中を魅了する好ゲームとなった。
まずスタジアムを沸かせたのは、フランス代表FWムバッペのとんでもないスピードだ。ムバッペのドリブルにアルゼンチン守備陣が全くついていくことができず、13分には自陣から1人でボールを運びペナルティエリアへ侵入。たまらずロホがファウルで止めてしまい、フランスが早々にPKを獲得した。これをグリーズマンが決めてフランスが先制に成功する。
また守備ではアルゼンチンのサイドバックからボールを繋がせるようプレスをかけ、フランスは中央からの組み立てを許さなかった。中央にいるメッシに対してはカンテがマークにつき、マテュイディもフォローに回るなど徹底的に対応。フランスがゲームを完全に支配したように思えた。
ところが、フランスは予想外の形で失点してしまう。41分、アルゼンチンが左サイドで得たスローインからパスを繋ぎ、中央のディ・マリアへボールが渡ると、思い切って左足を振り抜いた。このミドルシュートが見事に決まってアルゼンチンが同点に追いつく。
さらに後半開始早々の48分、FKのこぼれ球に反応したメッシが、振り向きざまに打ったシュートがメルカドに当たってゴール。これもフランスは予想していない形の失点だった。それまで流れの中から決定機は作られていなかったため、やや不運な逆転劇だった。
左SBの攻め上がりに対処できなかった“魔の7分間”
アルゼンチンとしてはリードを保って有利にゲームを進めたいところだったが、後半に“魔の7分間”が待っていた。まずは57分だ。フランスの左サイドバックを務めるリュカ・エルナンデスが前線へ攻め上がった動きをアルゼンチンは見逃し、左サイドをフリーにしてしまった。そこからエルナンデスのクロスが逆サイドまで流れ、パヴァールの豪快なボレーシュートが決まってフランスが同点に追いついた。
あの時間帯でフランスが両サイドバックを上げて攻撃的に出てきたことにアルゼンチンは上手く対応できなかった。パヴァールのシュートは見事だったが、それ以前にエルナンデスに裏を取られてしまったことが問題だ。アルゼンチンは右のサイドハーフを務めるパボンがエルナンデスを完全に見失っていた。
さらに7分後の64分、フランスはまたもエルナンデスが高い位置を取って左サイドを抜け出し、中央へクロス。こぼれたボールをムバッペが巧みに拾い、左足でゴールへ突き刺してフランスが逆転に成功する。ここもアルゼンチンはサイドを空けてしまい、エルナンデスは自由にクロスを入れることができた。この場面ではサイドバックが相手アタッカー陣に釣られて中へ動いていたため、サイドハーフのパボンがどこまでついていくのかなど対応をはっきりさせておくべきだった。
再びリードされてアルゼンチンが攻めに出た68分、フランスは速攻からムバッペが追加点を決めて勝負あり。アルゼンチンは後半ATにメッシのアーリークロスからアグエロがヘディングでゴールを決めたが、2点のビハインドはあまりに重かった。
[スコア]
フランス代表 4–3 アルゼンチン代表
[得点者]
フランス:13分 グリーズマン(PK)、57分 パヴァール、64分 ムバッペ、68分 ムバッペ
アルゼンチン:41分 ディ・マリア、48分 メルカド、90+3分 アグエロ
文/冨田 崇晃
theWORLD214号 2018年7月1日配信の記事より転載