トランプ「国連人権理事会」脱退は本当に悪なのか?日本メディアが報道しない「恥知らずの偽善」の正体

写真:ロイター/アフロ

こんにちは、中国人マンガ家の孫向文です。

先日、アメリカが国連人権理事会を脱退を発表し、世界から注目を集めました。これを受け、日本の左派マスメディアはトランプ大統領への批判を繰り広げています。

「人権を軽んじ、踏みにじるトランプ」という構図を報じているのは、日本や西側諸国のリベラルメディアだけではありません。

中国政府もこれに便乗して、自国の人権状況を美化して米国叩きをしています。中国外交部は「中国政府は各理事国と緊密に連携して、世界の人権事業の健やかな発展に貢献してきた」「我が国の人権状況は毎年のように進歩してるのに、米国はその現実を無視して中国を批判し続けている」と皮肉めいた発表をしました。

さらに、党宣伝部直属機関である新華社通信でも「米国トランプ大統領は世界から孤立する路線を続けている」と報道。著名な学者を使って「米国はいつも国連人権理事会を操っており、中国の人権状況をダシにして我々を批判してきた。今回やっと失敗して退会した」などと、ここぞとばかりに米国歴代大統領を猛反論しています。

しかし、人権理事会を「脱退すること」が咎められるほどの悪なのでしょうか。そもそも国連人権理事会(United Nations Human Rights Council、UNHRC)とは何なのか。

同理事会の主な活動は、国連加盟国の人権の状況を定期的にレビューし、審査をすることです。そして、深刻かつ組織的な人権侵害に対しては、改善を要求したり、勧告をするのが通例となっています。つまり、人権理事会は「人権警察」として、世界各国の人権問題を取り上げ、国際圧力をかける人道的な組織のはずです。

しかし、現実はそうではありません。中国が同会の理事国メンバーであることは、この組織の最大の滑稽であり、信ぴょう性を危ぶませている証であります。というのも、中国では「人権警察」というより「人権泥棒」とでもいうべき施政が行われているからです。

■収監数90万人、サッカー選手やアイドルまで新疆ウイグル強制収容所の悲劇

中国が侵している、最大の人権問題の一つが、チベット・ウイグル地域、および内モンゴルにおける少数民族の抑圧です。先日も亡命ウイグル人らの組織が、新疆ウイグル自治区で大量の強制的な収容所への収監が行われていたことをリークしました。

同自治区では17年から「思想の再教育」を名目に強制収容キャンプへの不当な拘束が横行。その数はなんと89万人、同地域のウイグル人の2〜4割にもあたるといいます。収容者の中には、有名なサッカー選手やアイドル、さらに民族教育を推し進める教育界の重鎮や出版社の重役など、文化・経済分野でウイグル人社会で影響力を持つ著名人たちが名を連ねているのです。

なぜトランプ氏を「人権軽視」と報じるリベラルメディアは、この重篤なニュースを報じないのでしょう? こんな国が理事国を務める人権委員会にどれほどの説得力があるのでしょう?

さらに米国が人権理事会を退会した直後に、アメリカの空席を取ろうと立候補したのは、何を隠そうロシアなのです。ご存知の通り、ロシアのプーチン政権では人権弾圧が深刻です。政権を批判する人が相次いで投獄、暗殺されます。これが人権理事会の理事国なのです。

ポンペオ米国務長官やヘイリー国連大使は、人権理事会からの離脱を「人権軽視」ではなく、むしろ人権抑圧を行う国(中国)が理事国であることを盾に人権を「恥知らずの偽善」への抗議だと説明しています。トランプ氏の人権軽視だけを報じ、米国サイドの脱退意図を伝えない”自称リベラル”メディアは果たして公正平等なのでしょうか。

米国が人権理事会の撤退を発表した後、中国のソーシャルメディア上には「五毛党」と呼ばれる党の世論誘導員がアメリカを批判する投稿が溢れました。その中には「米の帝国主義が没落した証拠。将来の国連人権理事会のメンバーはイラン、シリア、キューバ、ベトナム、ベネズエラ、北朝鮮などの社会主義国家が世界の人権を発展させる」と、まるで目を疑うような書き込みも見られました。

いやはや、北朝鮮が「恥知らずの偽善」を武器に国連人権理事会の理事国になる日が遠くないかもしれません。

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