DENSO可夢偉とau関口の限界トップバトル。可夢偉スーパーGT初優勝でレクサスがトップ4独占【GT500決勝】

 スーパーGT第4戦タイの決勝レースが7月1日、タイ・ブリーラムのチャン・インターナショナル・サーキットで行われ、GT500クラスはDENSO KOBELCO SARD LC500が優勝。トップ4をレクサス勢が占め、ファイナルラップでガス欠リタイアしたau TOM’S LC500を含めば実質、レクサス勢がトップ5という圧巻の強さを見せた。

 スコールに翻弄された前日の予選とは対照的に、決勝レースは快晴。気温32度、路面温度47度のドライコンディションで、66周にわたるレースが幕を開けた。

 クリーンスタートの後、2番手スタートのKEIHIN NSX-GTに襲い掛かったのは、3番グリッドからスタートしたDENSO KOBELCO SARD LC500のヘイキ・コバライネン。3コーナーの飛び込みでアウトから仕掛けると、その先でオーバーテイク。DENSO KOBELCO SARD LC500が2番手に浮上する。

 その間、先頭を走るMOTUL MUGEN NSX-GTの武藤英紀は周回ごとに2番手以下を引き離し始め、5周で約2秒のアドバンテージを築いた。

 一方、ジェンソン・バトンがステアリングを握る5番手スタートのRAYBRIG NSX-GTはさすがに最重量64kgのウエイトハンデがレースでは厳しいか、この序盤で苦戦。6番手のWedsSport ADVAN LC500の山下健太に5周目の最終コーナーで、続いて6周目1コーナーの飛び込みでカルソニック IMPUL GT-Rのヤン・マーデンボローにも交わされ、7番手に順位を落とす。

 RAYBRIG NSX-GTは続いてWAKO’S 4CR LC500のフェリックス・ローゼンクヴィスト、au TOM’S LC500の中嶋一貴にも交わされ、その後もペースが上がらず、ずるずるとポジションダウンしてしまう。また、8番手スタートのARTA NSX-GTも他車と接触したこともあり、順位を大きく下げてしまった。

 10周をすぎたあたりで4番手争いが激化。KEIHIN NSX-GTをねらったフォーラムエンジニアリング ADVAN GT-Rが、マシンをヒットさせながら競う間に、WedsSportの山下が2台をごぼうぬき。さらにその後ろからWAKO’Sも迫る。

 14周目、WAKO’Sのローゼンクヴィストが3コーナーの飛び込みでKEIHIN NSX-GTをオーバーテイク。ローゼンクヴィストは11番グリッドから序盤に大きく順位を上げる激しい追い上げを見せ4番手に浮上すると、さらに後続を引き離す。

 WAKO’S ローゼンクヴィストの勢いその後も続き、3番手WedsSportに迫る。その間にトップ争いも激化。18周目、まずトップのMOTUL NSX-GTに2番手のDENSOがレースリーダーの座を奪うべく迫る。

 2番手のDENSOはGT300クラスの車両を挟みながら、コーナーごとにMOTUL NSXのすきをうかがう展開。MOTUL NSXはタイヤのグリップが厳しそうな挙動を見せながらディフェンス。しかし、19周目、DENSOが混戦のなかオーバーテイクを仕掛ける動きを見せ、4コーナーのアウトからGT300マシンを絡めてMOTUL NSXをオーバーテイク。DENSOがトップに浮上する。

 ここで後方から猛烈に追い上げ、DENSOに食らいついたのがWAKO’Sだ。4番手を走行していたWAKO’S 4CR LC500は3番手WedsSportに迫り、22周目に交わすと3番手に浮上。さらに2番手のMOTUL NSXを追う。

 その後方では、23周目、激しく5番手を争っていたフォーラムエンジニアリングとカルソニック IMPUL GT-Rが接触。メインストレートでカルソニックとサイド・バイ・サイドとなったフォーラムエンジニアリングは、両マシンのサイドをヒットさせながら1コーナーのブレーキングに向かい、フォーラムエンジニアリングがスピン。1コーナーでグラベルに飛び出しマシンを停めた。フォーラムエンジニアリングはここでリタイアとなっている。

 26周目、再び上位陣が動き出す。WAKO’SがMOTUL NSXの1秒差まで迫ったのだ。WAKO’Sは27周の1コーナーでMOTUL NSXのインをとると、そのままオーバーテイク。2番手に浮上した。この時点でトップを快走するDENSOとの差は約7秒。

 まもなく66周レース折り返しになろうかという29周目、MOTUL NSX、auがピットに入る。ポールポジションスタートのMOTUL NSXはここでマシン左側のドアが閉まらず、モニター上で約56秒のピットストップを強いられることに。

 また、RAYBRIG NSX-GTはピット作業でなにかトラブルがあったか、すぐに2回目のピットインを行うことになってしまい、最後尾でレースに復帰している。

 注目されたピット戦略だが、MOTUL AUTECH GT-Rがタイヤ無交換でレースに復帰、CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rも同じく無交換戦略を選択したようだ。

 また、続々と行われたピットインのなかで、ピット作業によるタイムロスが相次いだ。4番手走行中だったKeePer TOM’S LC500は35周目にピットインしたが左リヤがうまくはまらず、10番手でコースに復帰することに。ZENT CERUMO LC500は左フロントタイヤがやはりうまくはまらず、タイムをロスしている。

 全車がピットインを終えドライバー交換を終えたところで、トップはDENSOの小林可夢偉、WAKO’Sの大嶋和也、3番手にZENTの石浦宏明が続く。

 DENSOとWAKO’Sは前半スティントに続き、ピットアウト後から激しいトップ争いを繰り広げた。1秒差以内の完全にテール・トゥ・ノーズで周回を重ねる2台。DENSOが37周目、WAKO’Sが36周目と両車ともにピットのタイミングはほぼ同じでタイヤも同じブリヂストンと、条件はほぼ互角。

 WAKO’Sは何度かDENSOに並びかかる動きを見せるも、DENSOの可夢偉が巧みにブロックする。

 この2台が優勝争いを展開するその後ろで、レース終盤にauの関口雄飛が猛烈な追い上げを見せた。3番手にまで浮上したau TOM’S LC500は、トップの2台より1秒近く速いファステストラップをたたき出しながら上位2台を追う。一時は7秒以上あった差は、54周目終了時点で約3.5秒にまで縮まった。

 56周目にはGT300クラスとの交錯によりDENSOとWAKO’Sが超接近。その間にauがトップ2台に急接近すると、auの関口は一気にWAKO’Sをオーバーテイク。ついにauが2番手にポジションを上げた。

 残り10周、DENSO可夢偉とau関口は激しいトップ争いを展開する。DENSO可夢偉は何度かコースオフするほど限界の走りを見せながら、GT300クラスの車両を間に挟むなどGT500ルーキーらしからぬ技を見せながらau関口の追い上げをかわし続ける。au関口は何度かストレートでスリップストリームを使いサイドに並ぶも、オーバーテイクには至らない。

 DENSO可夢偉とau関口によるふたりのトップ戦いは、このレースのクライマックスとなった……が、最後はまさかの幕切れとなる。

 レース残り2周、au関口が唐突にその勢いをなくしてペースダウン。トップのDENSOとの差が開いたかと思うと、ファイナルラップに入ったタイミングで明らかなスローダウン。その後、マシンを左右に振る挙動を見せ、ガス欠によるスローダウンが判明する。2番手のポジションは3番手走行中だったWAKO’Sにあっさりと交わされてしまう。

 DENSO可夢偉は最終ラップを独走すると、トップでチェッカー。今季からGT500にシリーズ参戦する可夢偉にとって、スーパーGT初優勝を初めて走行するタイで獲得することになった。2位には前半に苛烈な追い上げを見せ、後半にはトップ争いを展開したWAKO’Sが入った。

 3位にWedsSport、4位にZENT、ポールポジションスタートのMOTUL NSX-GTは5位でゴール。スコールの影響でホンダNSXが席巻した予選から一転、トップ4台をレクサス勢が占めるという結果になった。

 一方、終盤に鬼神のごとき走りを見せ、DENSOからトップを奪わんとしたau関口は最終ラップを走り切ることができずコース脇にマシンを止めてそのレースを終えた。マシンを降りて、コースサイドに座り込む関口。下を向いたままの関口姿に、なんとも言葉では表現できない悔しさが滲んでいた。

 注目のドライバーズランキングは、ランキングリーダーとしてタイに乗り込んだRAYBRIGは序盤から上位争いに食い込むことができず11番手。タイ戦の前にランキング2位だったMOTUL GT-Rはタイヤ無交換作戦に懸けるも12番手に終わり、両者ノーポイントに。

 また、昨年のタイ戦のウイナーでチャンピオンマシンであるKeePerは長引いたピット作業が尾を引きながらも、8位フィニッシュ。そしてARTA NSX-GTはレース中盤にマシンをピットに戻し、レースを終えている。

 スコールに翻弄された予選とはうってかわり、決勝レースは最後まで快晴のドライコンディションで行われ、予選とはまったく異なる勢力図となった。ピット作業でのタイムロスや、最終的にはマシントラブルが明暗を分けることになったものの、スタートからラスト2周まで、トップだけでなく中団以降もオーバーテイク&バトル満載の緊張感溢れるレースとなった。

 ドライバーズランキングもこのタイで優勝したDENSOがトップながら、3メーカーが拮抗。どのメーカーにもチャンピオンの可能性が大きく残る展開となった。次戦第5戦は8月4〜5日、富士スピードウェイで開催される。

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