【MLB】ダルビッシュが苦しむ“インピンジメント”とは 専門家が語る原因と治療法

カブス・ダルビッシュ有【写真:AP】

右上腕三頭筋腱炎でDL入りも新たに発見された「インピンジメント」

 カブスのジョー・マドン監督は今季2度目の故障者リスト(DL)入りしているダルビッシュ有投手が右肘のインピンジメントと炎症との診断を受け、炎症を抑えるためにコルチゾン注射を受けたと発表した。3~5日後に再検査を受け、今後の方針を決めるという。

 右上腕三頭筋腱炎でDL入りしていたはずのダルビッシュだが、新たに発覚した「インピンジメント」という耳慣れない呼称は一体何なのか。

「インピンジメントとは英語で衝突や挟まるという意味です。関節を構成する骨と骨の間に、筋肉、軟骨、脂肪や靭帯などが繰り返し挟まれたり、骨同士が繰り返し衝突し炎症を生じることがあリます。野球選手の場合では肩や肘、サッカー選手では股関節や足首などに多くこの症状がみられます。ダルビッシュ選手の怪我の詳細は不明ですが、球団が当初、発表した上腕三頭筋腱炎に今回改めて発表されたインピンジメント。そして、肘を伸ばした時に痛いという報道から肘後方インピンジメントではないかと推測します」

 こう解説してくれたのはサッカー元日本代表MF中村俊輔(ジュビロ磐田)のパーソナルトレーナーを務める入船しんもり鍼灸整骨院の新盛淳司院長だった。

 そして、一般的な肘後方インピンジメントの症状についても説明してくれた。

「肘の後方は、肘頭(ちゅうとう)という肘を曲げたときに一番出っ張っている骨と、肘頭窩(ちゅうとうか)というくぼんだ骨の部分で、肘の関節を構成しています。肘を伸ばして行くと出っ張った骨(肘頭)が、くぼんだ部分(肘頭窩)にはまりこんで行くように動きます。その際に関節の中にある脂肪体などを挟み込んでしまうことで、炎症を生じることがあると考えられます。

 脂肪体は、関節運動の潤滑性の補助をする一方、神経なども豊富で痛みの原因となると考えられています。肘の後方にある脂肪体は、肘が伸びると上腕三頭筋の収縮に伴い、肘頭窩(骨のくぼみ)から引き上げられます。なんらかの原因で脂肪体の動きが悪くなっていた場合、肘頭と肘頭窩で脂肪体などを挟み込み炎症が起きると考えられます」

脂肪体が痛みの原因か? リハビリに必要なこととは?

 本来肘関節の潤滑油的な役割をする脂肪体が痛みの原因になったのかもしれない。肘の関節の中で起きたイレギュラーが上腕三頭筋の痛みに繋がっていた可能性が高い。それでは症状はいかに改善させればいいのだろうか。

「超音波エコーで実際に肘の曲げ伸ばしをしながら、脂肪体や関節包の動きの悪さを観察できる場合もあります。肘関節後方インピンジメントによる炎症が疑われた場合、炎症を抑えながら、脂肪体の動きの改善を図ります。脂肪体が動くスペースを確保するために、上腕三頭筋と骨の癒着を改善したり、脂肪体自体の動きを良くするために脂肪体と他の組織の癒着を改善するアプローチを行います。また、上腕三頭筋が脂肪体を引き込む動きを円滑に行えるようにリハビリを行います」

 すでにコルチゾン注射による治療を受けたダルビッシュ。患部の癒着を改善できれば、復帰への大きな一歩となりそうだ。

「ダルビッシュ選手の肘の状態については様々なことが考えられます。自分の状況を客観的に見られる非常にスマートな選手だと思います。しっかり治してから復帰し、圧倒的なピッチングを見せてくれることを願っています」

 今季2度目のDL入りしてからは25日(同26日)に1Aで負傷後初の実戦となるリハビリ登板に臨み、5回3安打1失点5奪三振無四球の快投を見せていただけに軽症であることを祈るばかり。完全復活した姿をファンは心待ちにしている。

◇新盛淳司(しんもり・じゅんじ)【新浦安しんもり整骨院入船院】【新浦安しんもり整骨院今川院】【クローバー鍼灸整骨院】代表。柔道整復師、鍼灸師の資格を持ち、関節ニュートラル整体普及協会会員。サッカー元日本代表MF中村俊輔をセルティック時代から支える。ブリオベッカ浦安チーフトレーナーも務める。

(Full-Count編集部)

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