【人手不足と労働環境の現状】〈厚生労働省宮城労働局、北條憲一局長に聞く〉働き方改革で環境改善、生産性向上 多彩な助成メニューで支援

 企業の大小を問わず、全産業にわたり盛んに言われている働き方改革。生産労働人口の減少を背景に、国を挙げて労働環境の改善に取り組む潮流が生まれている。その推進の中心省庁となる厚生労働省の北條憲一宮城労働局長に、人手不足の現状や働き方改革の目的、取り組み企業への支援・助成策などを改めて聞いた。(小室 慎)

――労働力不足の現状を。

 「宮城県に関して言えば、震災前(2011年3月)に比べて2万5千人も人口が減少(17年10月時点)する一方で、現下の経済状況から有効求人倍率は1・69倍(18年3月時点)と過去最高が記録され、人手不足の状況が続いています」

――働き方改革の目的・意義は。

 「我が国では少子高齢化が急速に進み、労働力人口の減少が見込まれる中、経済を持続的に発展させるには『働きたいと希望する方すべてが活躍するとともに、働く一人一人の生産性を高めていく』ことが重要な課題となっています。しかしながら、今の働き方にはさまざまな問題が生じています。例えば、長時間労働を是認するかのような風潮が蔓延・常識化しており、労働者の仕事と家庭の両立が困難になっていたり、健康確保が阻害されている状況があります。悩みやストレスを抱える従業員が増え、欠勤率が増えているケースが少なくありません」

 「また、正規労働者と全労働者の4割を占めるに至っている非正規労働者との間に、不合理な処遇の差(理由なき処遇の差)が生じています。従業員のモチベーションを保ち、働く人の頑張ろうという意欲を引き出すことは生産性向上に結びつきます。さらに、中高年になると再就職がしにくい、再チャレンジしにくいなど、ライフステージに合った仕事の選択がしにくい状況が見られます。活用の仕方を考え、すべての従業員の定着率向上を図ることも大切です。すべての労働者にとって『働きやすく働きがいのある職場』『魅力のある職場』をつくり、生産性を向上させていくことが働き方改革のベースになる考えです」

――具体的に企業は何から取り組めばよいか。

 「働き方改革で取り組むべきメニューは多岐にわたります。『何から始めたら良いか』『こうした改善は国の助成の対象となるのか』などについて、社会保険労務士などの専門家が相談に応じます。東北各県労働局では、国の中小事業者への支援措置として委託事業により、『働き方改革推進支援センター』を今年度から開設しています。宮城では宮城働き方改革推進支援センター(電話=0120―750―573)が中小企業・小規模事業者の方を中心に『長時間労働の是正』『生産性向上による賃金引き上げに向けた支援』『非正規雇用労働者の処遇改善』『人材不足対応に資する技術的な相談』などについて、専門家がすべて無料で対応します」

――取り組みにあたり助成金制度は。

 「労働局(国)では中小企業事業者への支援策としてさまざまな助成金を用意しています。例えば(1)ポス・システムの導入によりレジ業務の合理化を図り、パート労働者の最低賃金を引き上げて、処遇の差を埋めるというようなケース(2)有期契約労働者の正社員化を図り、営業体制を強化したケース―など、企業が利用できるさまざまな助成金があります。このような助成金なども活用し、働き方改革の取り組みを進めていただきたいと思います」

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