【「鉄スクラップの日」特集】〈鉄リサイクル業界の課題と今後〉《日本鉄リサイクル工業会・鈴木徹会長(鈴徳取締役)》

雑品問題、国内処理の方策に知恵絞ろう

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 きのう7月1日は「鉄スクラップの日」。日本鉄リサイクル工業会の前身である社団法人日本鉄屑工業会の設立日が1975(昭50)年の7月1日だったことを記念し、同工業会が定めたもの。日本の鉄スクラップ業界では、中国の輸入規制強化を背景に雑品スクラップの扱いなどをめぐって様々な変化や課題が浮上している。変化への対応が求められる鉄リサイク業界の代表として、同工業会の鈴木徹会長(鈴徳取締役)に現状の課題や取り組みを聞いた。(小堀 智矢)

――6月8日の通常総会で、当業界にとってここまで一年のキーワードを〝雑品〟とした。雑品の混入によりスクラップの品質悪化が指摘されるが。

 「スクラップの品質問題に関しては単純に『どうにかしないとまずい』というのが正直な感想だ。これは会員の皆が同様に思っていることだろう。中国の雑品輸入は今年末で完全に禁止となる。問題は一段と厳しさを増すと見ている。雑品の処理は大きな問題である一方、当業界は個々の企業がきちんと課題に向き合っていくことができると感じている。輸出を含め、製鋼原料として一定の品質の鉄スクラップを供給していくことは当業界の使命だ」

 「雑品問題について『日本は20年間、雑品の処理を中国まかせにしてサボってきた。そのツケが回ってきた』と表現されている。日本は年150万~200万トンの雑品のリサイクルを中国にゆだねてきたが、それが国内に戻るのは好機とも言える。問題は雑品に含まれる銅など、中国では手選別されていたものをどう処理するかだ。人手不足の日本ではコスト面で難しさもあるが、輸出できなくなる以上、雑品の価格自体は下がってきている。中国以上のコストをかけてでも、きちんと日本国内で処理する方策を考えることが大切だ。昔は日本でやっていた雑品の処理を、再び今の条件の下でどうやっていくか知恵を絞らなくてはならない」

――改正廃棄物処理法が今年4月に施行され、改正バーゼル法も10月に施行となる。

 「廃掃法の改正に関しては家電4品目と小型家電28品目が『有害使用済機器』に指定され、扱い業者には届け出が必要となった。しかし、当工業会の会員の大半がすでに産業廃棄物収集運搬業などの許可を得ており、実質的な影響はほぼなかった。一方、当工業会としては法改正を機に雑品に対する会員の関心が高まったことに意義を感じている」

9月にも普電工と対話、鉄リサイクル全般での認識共有

――雑品問題などで普電工との関係強化を今年度の事業計画に掲げた。具体的な動きは。

 「当工業会からの対話の呼びかけに対し、普電工から回答があり、会合を開くことが決まった。会合では特定の問題について議論するのではなく、雑品も含め鉄リサイクル全般の課題について幅広く話をしていく。会合は、まずは半年に一回程度のペースで開き、必要に応じてプラスアルファで開催する。第1回目の会合は、9月頃をめどに調整している」

――普電工との対話の意義について。

 「電炉メーカーと鉄スクラップ業者の間では、お互いの実情について知らない事柄が少なからずあると感じる。まずはお互いの現状について認識を共有できるようにしていきたい。鉄リサイクルを担う者同士として、しっかりスクラムを組むべく、コミュニケーションを図る入口にしたいと考えている。会合の規模はさほど大きくせず、負担のない形で進めたい」

――非鉄金属関連の団体など、普電工以外との連携については。

 「非鉄金属業界には、非鉄金属リサイクル全国連合会(非鉄全連)など様々な団体がある。経産省の組織変更によって窓口が当工業会と同じ金属課になったこともあり、非鉄関連の団体とも関係ができ始めている。6月初めには非鉄全連の60周年記念式典が都内で開催され、会長代行で事務局が参加。また、古紙や金属などの資源回収業者で組織する日本再生資源事業協同組合連合会(日資連)からは7月14日に熊本で開催される全国大会に来賓と討論会パネリストの参加要請があった。ここ1~2年で周辺団体との関わり合いが増えたが、その契機の一つが雑品問題だと言える。雑品は各団体に共通する課題であり、想定外に大きな課題になっているからではないか」

――工業会では〝社会との対話〟を重視している。行政との関わりは。

 「社会との対話は全体にわたるテーマだ。普電工との会合もそうだが、関連する方々とは、どんどんコミュニケーションを取っていこうと考えている。行政との関係で言えば、法律の制定などを通して先方からの要請が強まったという側面もある。自動車リサイクル法にせよ、雑品問題にせよ、経産省や環境省からの働きかけをきっかけに当工業会が深く関わるようになった」

 「雑品やダスト処理をはじめ、鉄スクラップ業界をめぐる課題は非常に多い。そうした課題について、当工業会では、経済産業省をはじめ、環境省や国土交通省などとは非常に密接に連絡を取り合っている。鉄スクラップ業界に関する情報提供や意見集約について、当工業会が窓口になり得るということは、行政側に十分認知いただけていると思う。行政の要請には今後も丁寧に対応していく」

――リサイクルポート推進協議会の活動については。

 「3年前の秋、当時の影島会長名で国交省に大型船での鉄スクラップ輸出ができる港湾整備について要望書を提出した。国交省には議論していただいていたが、昨年秋にリサイクルポート推進協議会から鉄スクラップ輸出港の整備をテーマとする専門部会を立ち上げたいとの話があり、この7月にも『国際資源循環部会』として活動が始まる。今後の進捗状況を見守りたい」

――リサイクル業では総合化や事業領域の拡大が進んでいる。工業会に鉄リサイクル業以外の企業が会員として参加することについては。

 「当工業会の会員も鉄リサイクルだけでなく、様々な事業を行っている。その部分をどう取り込んでいくかは重要な課題になっている。当会の中にも様々な意見がある。基本的にまず、鉄をベースとした活動をしっかりやっていく考え方だが、範囲は広げていく必要があるのだろう」

 「今年度からDOWAグループの会社が当工業会に入会された。同社は、非鉄関連やシュレッダーダストの処理などで当会の会員とは付き合いが深いが、鉄スクラップの取り扱いがない企業のため、賛助会員として入会していただいた。これを契機に、鉄スクラップ業以外の企業を会員として受け入れることについて、今後の当工業会の在り方や方向性を含め、しっかり検討していく。鉄リサイクル業という切口で見れば、電炉メーカーに会員になってもらう選択肢もあるのではというような意見もあり、議論を深めていきたい」

――世界的なリサイクル業団体、BIR(国際リサイクリング協会)から大会を日本で開きたいという要請があったというが。

 「BIRから日本開催の可能性の打診があり、現状は様々な思いを巡らせている段階だ。2020年の東京五輪後のいつ頃に、どうやったら開催できるかを前向きに検討していきたい。あくまで主催はBIR。会員である当工業会はしっかり協力していく立場だ。BIRは鉄だけでなく、様々な資源を対象としており、当工業会からは日本の周辺団体にも声をかけていくことになるだろう。日本での開催となれば、日本語の通訳が入るため、「世界」を知るよい機会になるのではないか。中国の輸入規制に関しては、輸入国だった中国との距離が近く、高いリサイクル技術をもつ日本の取り組みに欧米からの関心が高いようだ」

「雑品スクラップ問題」とは

 雑品スクラップとは鉄や非鉄金属、プラスチックなど多様な素材で製造された設備機器や部材のスクラップ。代表例は配電盤やモーター、家電製品、オフィス機器、電子機器など。

 近年、雑品スクラップをめぐり新規参入業者のヤードなどで火災が多発。社会問題となったことが法規制強化の背景となった。日本の雑品スクラップは主に中国に輸出されていたが、昨年8月に中国政府が「固体廃棄物」として雑品を含む輸入禁止品目を制定。すでに中国では輸入業者のライセンス停止が始まり、今年末で雑品輸入は完全に禁止される見通し。

 こうした事態を受け、日本でも雑品の輸出業者でヤードの撤退や荷受けを停止する動きが出ている。国内で雑品をリサイクルするにはシュレッダー処理が最適だが、ダスト処分場がひっ迫。電炉や輸出向けのスクラップに雑品が混入し、スクラップの品質悪化も課題となっている。