近藤&上沢、打者も投手も日ハムから セイバー目線で選ぶ6月のパ月間MVP

日本ハム・上沢直之(左)と近藤健介【写真:石川加奈子】

勝率1位ロッテは投手陣が安定、西武は打線が相変わらず好調も…

 7月1日終了時点で3位が同率で3チームで並び、「Aクラスが5チーム」(というか「Bクラスが1チーム」)という珍現象が起きた大混戦のパ・リーグ。6月のチーム成績は以下の通りです。

ロッテ
14勝8敗 OPS.751 本塁打14 防御率2.85

オリックス
11勝9敗 OPS.697 本塁打19 防御率3.29

日本ハム
12勝10敗 OPS.800 本塁打30 防御率3.56

ソフトバンク
11勝10敗 OPS.712 本塁打36 防御率4.09

西武
11勝11敗 OPS.795 本塁打32 防御率5.13

楽天
10勝13敗 OPS.725 本塁打21 防御率3.00

 Aクラスの5チームが5割以上、Bクラスのみ負け越しと明暗が分かれました。6月の勝率1位は千葉ロッテ。防御率2.85は12球団で1位ですし、チームQS率59.1%、さらには7回以上自責点2以内で記録されるHQS(ハイクオリティスタート)の率も40.9%と先発が安定して結果を残しています。なお、6月26日から5試合連続でQSを達成、うち4試合はHQSです。

 打線は相変わらずハイレベルにある西武ですが、とうとう月間防御率が5点に突入してしまいました。増田達至不在の救援陣の立て直しとしてカスティーヨを先発から抑えに配置転換しましたが、救援登板4試合のうち3試合で失点。不安の残る起用となっています。

 7月1日終了時点で西武は首位ですが、打率1位、防御率6位という状態。この状況のまま西武が優勝を果たせば史上初になるとのこと。とにもかくにも、5チームが4ゲーム差の中に詰まっているパ・リーグ。ここから抜け出せるチームはどこなのでしょうか。

 それでは、セイバーメトリクスの指標による6月のパ・リーグ月間MVPを選出していきましょう。

上林が目立った活躍もセイバーメトリクスの指標では…

◯6月月間MVP パ・リーグ打者部門
近藤健介(北海道日本ハムファイターズ)
OPS 1.140 wOBA 0.484 RC27 11.42
出塁率.460(すべてリーグ1位)
長打率0.680(リーグ2位)

 NPBが発表した候補選手は8名ですが、その中でも有力な候補の成績はこちらです。

近藤健介
打率.373 28安 5本 20点 得点圏打率.381

上林誠知
打率.329 27安 9本 24点 得点圏打率.400

吉田正尚
打率.375 30安 2本 14点 得点圏打率.625

 セ・パ交流戦では、リーグ内最高勝率のオリックスから吉田正尚が選出されました。月間MVPでも有力な候補ですが、それ以上に目立った活躍を見せたのはソフトバンクの上林。本塁打9、打点24はリーグ1位です。なお6月の上林の打順は
6番 10試合 本塁打3
1番 4試合 本塁打3
7番 3試合 本塁打2
5番 2試合 本塁打1
と流動的でしたが、この全ての打順で本塁打を放っています。月間MVPの最有力候補になるのではと予想しています。

 では、セイバーメトリクスの指標を見てみましょう。

近藤健介
OPS 1.140 出塁率.460 長打率.680
wOBA .486 RC27 11.61

上林誠知 
OPS 1.65 出塁率.345 長打率.720
wOBA .454 RC27 8.69

吉田正尚
OPS 1.002 出塁率.427 長打率.575
wOBA .433 RC27 9.62

 近藤の指標が上林、吉田を上回っており、より得点に貢献したことが伺えます。近藤と上林のOPSの差は僅差ですが、大きく違うのが出塁率。その要因は近藤の四球12(うち1つは申告敬遠)に対し、上林は2。しかも、うち一つは申告敬遠ですので、実質、上林の四球は6月29日、ロッテの涌井秀章から選んだ1つのみ。6月29日から1番を任されている上林の四球数の推移に注目です。

先月に続く活躍、安定感が増してきた上沢

◯6月月間MVP パ・リーグ投手部門
上沢直之(北海道日本ハムファイターズ)
登板3 2勝0敗  
防御率1.17  FIP 1.69  WHIP 0.74
QS率100% K/BB 10.5
RSAA 6.15 (すべてリーグ1位)

 NPB選出の候補選手は8名ですが、有力候補の月間成績はこちらです。

上沢直之
防1.17 23回 2勝0敗 奪三振率8.22 被打率.188

岸孝之
防1.74 31回 4勝0敗 奪三振率9.87 被打率.193

ボルシンガー
防2.31 35回 5勝0敗 奪三振率6.94 被打率.203

菊池雄星
防2.18 33回 3勝1敗 奪三振率9.27 被打率.217

石川歩
防0.99 27回1/3 4勝0敗 奪三振率5.00 被打率.250

増井浩俊
防0.66 13回2/3 0勝0敗5H7S 奪三振率9.88 被打率.081
 
 今月のパ・リーグ投手部門も実力が伯仲しています。勝ち星では、ボルシンガーが5勝と一歩リードしています。完封勝ちが1つ、4試合でQSかつ沢村賞式QS(7回以上で自責点3以内)を達成しています。先月も4勝でしたので合わせ技一本での6月の受賞が有力でしょう。

 それでは、セイバーメトリクスによる評価での上位の選手はどうなるでしょうか。以下に紹介します。

上沢直之
FIP 1.69 被本塁打0 WHIP 0.74
QS率100% K/BB 10.50 RSAA 61.5

岸孝之
FIP 2.86 被本塁打3 WHIP 0.87
QS率75% K/BB 5.67 RSAA 4.24

ボルシンガー
FIP 2.81 被本塁打1 WHIP 1.00
QS率80% K/BB 2.70 RSAA 5.00

菊池雄星
FIP 2.48 被本塁打2 WHIP 0.97
QS率80% K/BB 5.67 RSAA 5.90

石川歩
FIP 2.68 被本塁打0 WHIP 1.07
QS率75% K/BB 2.50 RSAA 4.29

増井浩俊
FIP 2.97 被本塁打1 WHIP 0.81
QS率– K/BB 3.00 RSAA 1.70

 上沢は、FIP、WHIP、QS率、K/BBすべてリーグ1位を獲得しています。投球回数は23と他の先発投手よりも少なめですが、RSAA(Runs Saved Above Average)という、平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す指標

(リーグ平均FIP?選手個人のFIP)×投球回数/9

においても、リーグ1位の数字を示しています。よってパ・リーグの月間MVPは、先月もセイバー指標で優秀な成績を収めていて安定感を増してきた上沢直之を選出いたします。

(Full-Count編集部)

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