看護師のワークライフバランス 現場の声、効率化に反映 長崎県看護協会と病院が推進

 長崎県内の病院で、高齢化の進行に伴う人手不足や働き方の多様化などを背景に、看護師のワークライフバランス(WLB、仕事と生活の調和)推進活動が進められている。県看護協会は2011年度から、希望する病院に助言などを行う推進事業を展開。この事業で16年度着手した諫早市天満町の諫早記念病院(山口義彦院長)は、現場の看護師の声を基に他部署とも連携して取り組んでいる。
 6月下旬、同病院に隣接する古民家を改装した研修所であったWLB推進チーム「よかばっ会」の月1度の会合。議題は朝の出勤時間について。「(始業の)20分前まで(仕事に)入らないようにしよう」「遅く出勤できるならうれしい。新人の時から『早く来(こ)んば』と言われてきた」-。女性看護師ら約10人が本音で意見を交わした。
 同病院の日勤の出勤時間は午前8時45分だが、実際は多くが早めに出勤。特に、各病棟でその日の現場リーダーを務める看護師は勤務前の作業が煩雑だった。推進チームは別の病院を参考に、リーダーが毎朝行う看護師の配置決めは前日の勤務者が済ませるなどの対策を、一部病棟で数日前から試行。この日は問題がなかったことが報告され、7月から全病棟で行うことを決めた。
 推進チームは、各病棟の看護師に病院の看護部長や事務長、他職種の職員らを加えたメンバー。1年目の16年度に行ったアンケートで▽看護ケアに費やせる時間が不足している▽長期休暇や年休が取れない-などの不満が強いことが分かった。そこで2、3年目に非効率な業務の見直しなどを実行している。
 例えば、入院患者の食事の時にお茶を出すのは以前、看護師の仕事だったが、多忙な時間帯に少ない人数で配るため、お茶が冷めてしまう問題点があった。そこで給食部門と交渉し、昨年から配膳時にお茶も一緒に出してもらう代わりに、看護師が食器のふたを種類ごとに分ける作業を引き受けた。余った時間をケアの充実に充てた。
 ほかにも看護部門の長年の懸案がいくつか解決した。時間休導入や誕生日休暇の勧奨で年休取得を促し、2年目は年間の平均取得日数が約3日増加した。
 中尾理惠子看護部長は「改善は少しずつだが、病院の協力で部署を超えて話ができ、看護の質向上や他部署の仕事の効率化にも役立っている。望ましい看護に近づけたことで職場への満足度も上がっている」と手応えを語る。
 県看護協会の事業は離職防止が目的の一つ。看護師は女性が多く育児などで離職が多い傾向にある。慢性的な人手不足で、夜勤を敬遠する人も増えており、弾力的な働き方を可能にして人手の確保、定着を図る必要がある。
 WLBを担当する同協会の久家美智代副会長は「昔と働き方が変わり、仕事と子育て、介護などの家庭生活とを両立させ、年を取っても働き続けられる人材活用が求められる。推進の取り組みを協会として続けたい」としている。

◎ズーム/県看護協会のWLB推進事業

 日本看護協会が都道府県協会を通じて進めている。希望する病院で院内に推進チームをつくってもらい、3年間で重点的に取り組んでもらう仕組み。協会側は推進チームに助言などの支援を実施し、看護師向けのワークショップを開くなどして実施事例を紹介している。県看護協会は2011年度に事業開始。これまでに県内民間13病院が参加し、うち11病院は既に完了。諫早記念病院など2病院が3年目で、事業は本年度で終了予定。

出勤時間の課題を話し合った「よかばっ会」の会合=諫早市天満町

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