【豊田通商金属本部の課題と展望】〈村田稔本部長〉車産業の変化に迅速対応 国内再編、子会社の機能強化で拡販

 豊田通商金属本部が時代に対応した組織体制、営業体制を整備して業容を拡大している。多様化する顧客ニーズに応えることを可能にする組織体制作り、リチウムなど自動車の電動化に不可欠な金属資源の生産拡大などを着実に進めるとともに、鋼板加工などの海外事業にも引き続き力を入れる。村田稔金属本部長(専務執行役員)に、今年度の金属本部の課題と展望を聞いた。(片岡 徹)

――今年度の業績見通しと現状は。

 「売上総利益930億円(前年同期比7・3%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益340億円(同21・9%増)を見込む。4~5月はほぼ計画通りに推移している」

――アメリカでは保護貿易の姿勢も具体化しています。商売への影響は。

 「関税引き上げ措置などが打ち出された当初は混乱したが、現状は落ち着いてきている。足元では、米国内の鋼材市況などが上昇したこともあり、大きな影響は出ていない」

――昨年度から本部の組織再編を行いました。成果などは。

豊田通商金属本部・村田本部長

 「旧非鉄SBUの一部機能を旧自動車鋼材SBUに編入するなどの再編を行い1年がたった。お客様は品種別の区分けをしているわけではない。当社としても扱い品種などにこだわらず、鉄とアルミの担当者が一緒になってお客様のご要望に応えるという意識が芽生えてきた。またアルミ関連の商売を受注し順調にスタートした」

 「ただ、組織が再編されても専門性を維持していきたい」

――自動車産業は100年に一度の変化と言われるが、そうした変化に対してどのような対応を。

 「電動化が進めば、電池とモータが増えることになる。素材でいえば、リチウムや電磁鋼板がより多く必要になる。当社はアルゼンチン・オラロス塩湖でのリチウム資源開発プロジェクトを共同推進する豪州の資源開発会社オロコブレ社へ15%出資。パートナー関係を強化している。リチウムを中長期的に安定供給する狙い。この出資金はプロジェクトのフェーズ2に充当する予定。拡張後は生産能力を年間1万7500トンから4万2500トンに引き上げる。19年下期の稼働を目指している」

――海外での取り組みは。

 「収益改善の伸び悩んでいた一部の事業での改善を進めた。またアメリカ、メキシコでの鋼板加工事業にも力を入れている。メキシコでのブランキング加工は2020年1月の稼働を計画しており、当社としては金属プレスメーカーと合弁で展開する初のケースとなる」

――自動車以外の分野の成長戦略は。

 「建材は、自動車の設備投資に関係した部分での展開が主体になる。また、電磁鋼板やステンレスなどの貿易分野でも拡大が見込める」

――国内については、製品販売では豊通鉄鋼販売の機能をさらに強め、加工会社をグループ化したほか、資源関連では豊通マテリアルの機能を強化している。

 「オリエンタル鋼業(鋼材加工・販売など、本社・富山県射水市)、豊通鋼管(鋼管引抜切断加工・販売など、本社・愛知県大府市)、関東コイルセンター(鋼材加工・販売など、本社・東京都青梅市)を今期から豊通鉄鋼販売の100%グループ会社にした。販売だけでなく加工も含めた商圏拡大へ向け、機能を明確化するとともに、ガバナンスを強化する狙い」

――国内でのグループ会社の機能強化策は現状で一段落したとみてよいか。

 「かなりの機能をグループ会社に移管し、一段落した。戦略を立てる上で組織として一つの形が出来上がった。さらなる販路拡大、お客様のサービス向上につなげていきたい」

――自動車の軽量化ニーズの中で、超ハイテン鋼板の加工・扱い量も増えているが。

 「超ハイテン鋼への対応は、日本では120キロ鋼までのスリット加工への体制が完了している。また中国では150キロ鋼までのレベラー加工の体制が完了している。今後は米国で150キロ鋼までのレベラー加工の対応を整備していく。鉄鋼メーカー、自動車メーカーの変化に今後も迅速に対応していく」

――人材育成のポイントは。

 「各自のキャリアをしっかりとつかめるキャリアパスの設定を見直したい。また、生産性向上への取り組みを通じて有限な時間を意識した働き方をさらに加速していきたい」

――今年、豊田通商は設立70年の節目を迎えます。

 「高炉メーカーさんの指定問屋となり、豊田スチールセンターが稼働を開始してすでに半世紀。当時としては多大な投資だっただろうが、鋼板の加工を行っていくことが、のちのち我々の基盤となり、その後の海外展開にもつながっている。お客様、諸先輩からのこれまでのご指導に心から感謝し、今後の発展につなげていきたい」

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