【インドネシアの資機材事情】〈シンフォニアテクノロジー・中山泰伸氏(現地法人代表)に聞く〉リフマグ、大鉄合弁に納入 地元案件の開拓課題

 シンフォニアテクノロジーは2012年にインドネシアのジャカルタで事務所を開設し、14年に現地法人化した。鉄鋼や鉱業とも関係深い振動機の営業を16年経験し、グローバル市場開発部を経て4年前から現法へ赴任している中山泰伸代表に市場環境や取り組みを聞いた。(ジャカルタ=黒澤 広之)

――シンフォニアテクノロジーは、神鋼電機時代からインドネシアで数々の実績があるそうですね。

 「30~40年前から日本政府のODA案件で国営の砂糖工場へ振動機を納めたほか、発電機でも納入実績があります。最近のピークは日本の自動車メーカーがインドネシアへ相次ぎ進出した時期で、部品の鋳物搬送に使われる高品質な振動機や、一部メーカーからは自動車試験装置を受注し納めました」

――インドネシアは日系自動車メーカーのシェアが高いものの、想定ほど生産台数は増えていませんね。

 「16~17年は増加したものの、ピークだった14年の130万台には戻っていません。またアセンブリが多く、組立のKD(ノックダウン)生産が中心のため、振動機のような設備の新規発注が追加で出てくるのは、まだ時間がかかりそうです」

――鉄鋼や鉱業などでの受注状況は。

 「新日鉄住金グループの大阪製鉄とクラカタウ・スチールが合弁事業で立ち上げたクラカタウ・オオサカ・スチール(KOS)ではリフマグを納入しました。振動機はニッケル鉱山や炭田向けで案件が出てきており、スラウェシ島の砂糖工場といった食品向けでも受注があります」

――現法開設から4年ほどになりますが、見えてきた課題は何ですか。

 「インドネシア市場はポテンシャルが高いと見られていますが、当社のような日系の機械メーカーができる仕事は実際には限られています。大手エンジニアリング会社は鉱山やエネルギー関連で1千億円規模のプロジェクトを受注していますが、10~100億円規模といった我々が狙う投資案件は少なく、現地資本で民間に多い華僑企業は主に中国から設備を導入しているのが実情です」

 「相手にできるのは自動車メーカーのような同じ日系企業になりがちで、鉱山や砂糖といったローカルの案件を獲得していくには売る仕組みを考えないといけません。今はそのための基盤づくりを進めている段階と言えます」

――価格競争が激しいインドネシア市場を攻略するため、現地企業のシコ・テクノと提携していますね。

 「シコ・テクノはオーナーが日本人で、スカルノハッタ国際空港の近くに工場を持ち、ニッケル精錬の設備で使われる中規模プラントの製作に強みがあります。鋼材を加工する製缶技術は日本の会社と遜色なく、国営資源会社のアネカ・タンバン(アンタム)へ継続的に設備を納めている実績もあり提携しました」

 「当社が日本で設計・品質管理を行った上で、技術をシコ・テクノへライセンス供与し生産を委託しています。現地生産できる体制を確保したことで、豊橋製作所で製造しインドネシアへ輸送するよりコストは半減できました」

 「価格だけでなく、品質が再評価され受注につながるケースも出てきています。中国製が多く入ってきていると言いましたが、保全に苦労したお客様がシンフォニア製の方が若干値段は高くても、長い目で見てメリットがあると買い替えて下さることもあります」

――今後の現法の目標は。

 「現在のスタッフは日本人が私一人で、現地スタッフは6人。事務所開設時の現地スタッフ3人からは増員しましたが、まだまだ規模を大きくしていかなければいけません。まず売上高で10億円、将来的には事業部並みの50億円を目指していきます」

© 株式会社鉄鋼新聞社