【新日鉄住金グループ企業の〝今〟33】〈日鉄住金片倉鋼管〉環境対応や軽量化などニーズに合った商品開発

 日鉄住金片倉鋼管(本社・兵庫県尼崎市、社長・龍田晃一氏)は、冷間引抜鋼管の国内最大手メーカー。建機のシリンダー向けを中心に年間3万トン生産している。龍田社長は「長年の歴史の中で培ってきた当社の冷間引抜鋼管の技術と新日鉄住金の素管の技術を融合し、環境対応や軽量化といった時代のニーズに合う商品を供給していきたい」とする。

 同社の創業は1936(昭和11)年の片倉七郎商店。創業当初はスクラップや鋼管を扱っていたが、1944年に片倉鋼管製造所として引抜鋼管の生産を開始した。創業者の片倉七郎氏は、大径鋼管の需要増を見越し1976年に当時世界最大の700トン油圧抽伸機を大阪工場に導入。この思い切った投資が現在の同社の礎となっている。環境変化が激しい中、さらなる事業の発展を期するために、今年2月に新日鉄住金の子会社となり、新たなスタートを切っている。

 現在の生産拠点は、本社に隣接する阪神工場と広島工場(広島県東広島市)の2カ所。阪神工場は、2008年に現在地に移転。高生産性・ゼロキズをコンセプトに工場内の自動搬送化、自動倉庫、自動酸洗ラインなどシリンダー用鋼管の製造ラインとしては理想に近づけた。入出荷時以外はクレーンを使わず自動搬送し、シリンダーチューブで最も気を付けなければならない外面傷を極力排除している。3ラインで80~420ミリ径の生産が可能。大径で中圧から高圧に対応したシリンダーチューブを主に生産している。

 広島工場は、1968年に開設。2017年に建屋を増設し、完全自動化の表面処理設備を導入している。20~340ミリ径の生産が可能。阪神工場よりも小径を主に生産している。阪神工場同様、建機のシリンダー向けのほか、フォークリフト用シリンダー、織機用のロールなどの産業機械、自動車向けにも出荷している。

 現在同社の売上構成は、建機のシリンダーチューブ向けが70%、産業機械向けが20%、自動車などが10%。大半を占める建機は好調が続いているが、世界的な景気に左右され、好不調の振幅が大きいため「第二の柱の開発が課題と認識している」(龍田社長)とする。一方で建機需要も更に深堀し新たなニーズを拾い上げていく考えだ。建機メーカーのニーズは多様化しており、そのニーズを確実に把握していくことがポイントになる。「当社の冷間引抜の技術と新日鉄住金の素材の技術力を生かし、建機メーカーと一緒になって新商品を開発していきたい」とし「製品のハイエンド化には、素管からの技術開発が必要になってくる。その意味からも当社が新日鉄住金グループの一員になったことは大きな意義がある」とする。

 当面の課題としては、製造面では、各ユーザーの増産対応に応えることだ。当社の特徴であるBCPを兼ねた両工場でのラップした製造範囲を活用し、阪神工場、広島工場での最適な生産を実施することで、限られた人員の中で最大限の生産量を目指す。さらに人員の確保はもとより、改善力を生かして省人化を図ることにも注力する。「ユーザーからの増産には確実にこたえるべく、早期に準備する」とする。営業面では拠点として、大阪と東京に営業所、名古屋に事務所を構えているが「ユーザーの多い名古屋は増強を図りたい」とする。

 海外へは、米国や中国、インドネシア、タイなどの日系建機メーカーに輸出している。国内外とも直接ユーザーと取引するケースが多い。龍田社長は「ユーザーに近く情報も早く入るため、ニーズの変化などに迅速に対応できる」と利点を上げる一方で「十分に営業活動が出来ていない分野もある。これからは商社とパートナーシップを組み、商社のネットワークと情報を活用することで、新しいマーケットの開拓を効率よく進めていきたい」と話す。(このシリーズは毎週水曜日に掲載します)

企業概要

 ▽本社=兵庫県尼崎市

 ▽資本金=1億円(新日鉄住金の出資比率80%)

 ▽社長=龍田晃一氏

 ▽売上高73億円(18年3月期単体)

 ▽主力事業=冷間引抜鋼管の製造・販売

 ▽従業員=132人(18年6月・単体)

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