長崎県庁舎移転から半年 台風時、強風で転倒事故 防災拠点だが非常食なし… 浮かぶ課題 漏れる不満

 新県庁舎に移転して4日で半年。毎日多くの見学者でにぎわう一方、アクセスや執務室について不満の声も聞かれる。移転後初めて台風が接近した3日、「防災拠点」としての課題も浮き彫りになった。
 台風7号が長崎県に接近した3日午後2時ごろ、敷地内で事故が起きた。女性(53)が庁舎と駐車場を結ぶ横断歩道付近で突風にあおられ、転倒。目撃した警備員の男性によると「急に飛ばされて側溝のふたの上を横に滑った」。女性は脚にけがを負った。
 転倒したのは行政棟と駐車場棟の間。海から吹く風が両棟に挟まれて一カ所に集まるため、「ここは風が強くてドアが開けづらい」と話すタクシー運転手もいる。庁舎を管理する長崎県管財課は「強風による事故は想定していなかった。今後は張り紙などで注意を呼びかけたいが、工事による根本的な対策は難しい」と話した。

 ■避難所 指定受けず

 防災拠点として整備された新庁舎。大地震にも耐えうる免震構造で、災害時には県の司令塔機能を果たす予定だ。しかし、建物は長崎市による避難所指定を受けていない。県民が避難しても非常食の備えはない。
 新庁舎には毎日大勢の見学者が訪れている。県民センターが行う長崎県庁見学ツアーは、1月から半年間で165回実施され、利用者は4307人に上る。ツアーの予約は8月までほぼいっぱいの状態。また、県広報課によると、8階の展望エリアには毎月約1万人が訪れているという。広々とした1階のエントランスホールの利用も活発。「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の世界遺産登録時にパブリックビューイング会場となるなど、さまざまな用途で活用されている。
 
 ■少ないバスの便数

 一方、アクセスの悪さを指摘する声もある。JR長崎駅から約800メートル。庁舎のすぐ近くに「長崎県庁前」バス停が設置されたが、市内を走る路線の1日当たりの便数は、長崎県営バスが「本原一丁目行き」1便、「女の都入口行き」2便、「滑石団地行き」6便、「中央橋行き」12便。長崎バスが「住吉行き」4便、「二本松団地行き」5便と少ない。長崎県交通局は「現時点で増便、増路線の計画はない」と話す。
 自家用車で訪れた場合、駐車場は30分ごとに150円を徴収され、「料金が高い」と不満を口にする来庁者も。長崎県管財課は「民業を圧迫しないよう料金設定した」と説明する。
 旧庁舎時代と異なり、執務室と外部との間に見えない壁が生まれた。旧庁舎では誰もが執務室に入ることができたが、新庁舎ではセキュリティー強化や情報漏えい防止のため、執務室を「職員専用エリア」と指定。来庁者はエリア外のカウンターに置かれた内線電話で担当職員を呼び出す必要がある。長崎県政記者室では「閉鎖的だ」との声も。ある長崎県職員は「以前より過剰に秘密主義的になっている気もする」と語った。

台風7号の接近に伴う激しい雨風に見舞われた長崎県庁舎=長崎市尾上町

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