メタル経済研究所が調査研究成果報告会

 日本メタル経済研究所は3日、東京・赤坂の三会堂ビルで17年度調査研究成果報告会を開催した。当日は「EVとメタル」など8件の講演が行われ、会員企業などから約230人が参加。各研究員による成果報告と交流会を通じて活発な意見交換が行われた。

 開会挨拶で川口幸男理事長は「本日の発表はいずれも主任研究員が精力的に調査し、まとめた力作となっている。当研究所としての分析、メッセージ、提言が盛り込まれ、示唆に富んだ内容になったと自負している。ぜひ活発に意見をいただきたい」と述べた。

 続いて山崎信男主任研究員が「銅製錬業における不純物の動向と技術的な対応」で講演した。世界的に銅精鉱の砒素(As)品位が上昇傾向にあるという課題に対し「30年にはAs品位が足元の0・2~0・22%から0・31%まで上昇する可能性がある。今のうちに抜本的な処理技術を確立しておくことが重要」と指摘。世界的な不純物の規制強化の動きや銅精鉱中のAs分離・除去の現状などについても解説し、「国際競争力、原料対応力、環境保全力の維持・強化の観点から共同砒素処理会社を作ってはどうか」と提言した。

 新村隆平主任研究員は「中国の亜鉛製錬業の現状と課題」について解説。中国の製錬能力拡張計画は今後60~70万トンとなっているが、環境規制の強化や原料調達問題などで増産ハードルが高くなっている。今のところ設備能力過剰となる可能性は低い」との見方を示した。

 「中国の非鉄リサイクル動向」では桜井文隆主任研究員が、今年末に実施予定の廃7類銅スクラップ輸入禁止の影響などについて講演。「大変厳しい方針だが、輸入禁止は実施される見通しだ。廃7類の不足分は故スクラップ、廃6類が埋め合わせることになるだろうが、転換には時間がかかる。スクラップ発生国では分別・前処理の強化、処理費アップなどの影響が考えられる。日本としては廃7類の処理先の開拓が求められる」と話した。

 報告会ではこのほか、E―スクラップリサイクルや金属取引所、米国における電線産業、日本の電力インフラ更新に関する講演があったほか、「EVとメタル」と題した講演があった。

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