指揮官も絶賛する「相手が嫌がる選手」 侍J女子代表が誇る“韋駄天”

身長155センチの小兵ながら侍ジャパン女子代表で活躍する田中美羽【写真:石川加奈子】

全選手トップの一塁到達タイム4秒24をマークする田中美羽

「第8回WBSC女子野球ワールドカップ」(8月22~31日、米国フロリダ)で6連覇を目指す侍ジャパン女子代表が3日、新潟県新潟市の「HARD OFF ECOスタジアム新潟」で強化合宿を打ち上げた。

 代表選手20人の選考にあたって「走れることを大事にした」と橘田恵監督が言うとおり、合宿中に組まれた6試合では、盗塁やバントを生かした機動力野球を随所に見せた。

 俊足ぞろいの選手の中でも、最速タイムを持つのは20歳の田中美羽内野手(アサヒトラスト)だ。右打者ながら昨冬に行われたトライアウトでは、一塁までの到達タイム4秒24で全参加者のトップだった。

 今回の合宿でも足を生かしてバント安打を量産した。主に2番で起用され、12打数6安打で4犠打をマーク。6安打のうち半分の3本がバントによる内野安打だった。圧巻だったのは2日の開志学園高戦。1‐0で迎えた5回無死二塁から三塁線ギリギリに転がした。無死一、三塁と好機を広げ、この回の3得点につなげた。

 トライアウト挑戦2回目で初の代表入り。「自分のアピールポイントは足なので、それを全部につなげたいと思っています。今のチームで自分がどういう立場なのか。求められる役割を考えて、何でもできるバッターになりたいです」と目を輝かせながら語る。

身長155センチと小兵だが、パンチ力と粘る技術を兼ね備える

 身長155センチの小さな体には、向上心が詰まっている。横浜隼人高2年の時に受けた前回のトライアウトでは「変化球に対応できませんでした。芯に当たっても(内野の間を)抜けなくて」と力の差を痛感した。進塁打やバスターなど打撃練習に明け暮れ、今ではパンチ力と追い込まれてからファウルで粘る技術を身につけた。

 高校卒業後は日大体育学科に通いながら、クラブチームのアサヒトラストに所属。06年から前回大会まで日本代表の主力として活躍した志村亜貴子現日本代表コーチとチームメートになり、間近で走塁技術を見て、聞いて、直接学んでいる。

「スタートの時に(体が)浮いてしまう癖があったのですが、左足を摺るくらいのイメージでいいよと教えてくださって、それが、はまりました。小さい頃、志村さんからサインをもらったことがあるんです。足が速いし、レジェンドですよね。そういう方と一緒にいられるのは凄いことです」。

 日本の機動力野球を象徴する選手だった志村コーチから田中へ、そのエッセンスは確実に受け継がれている。橘田監督も頼りにしている。「小柄ですが、一番足が速いし、打撃も粘り強い。相手が嫌がる選手です。苦しい試合の突破口になり、切り開いてくれると思います」と期待する。

 初めて日本代表のユニホームに袖を通した時、田中の胸にこみ上げた感情は「興奮」だったという。田中が志村コーチに憧れたように、今度は田中自身が女子野球の魅力を発信する立場になる。「少しでも多くの方に、女子野球を応援したいと思ってもらえるように、全力プレーをします」と語る言葉には力がみなぎっていた。

(Full-Count編集部)

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