金属行人(7月5日付)

 障害者雇用に力を入れている鋼材需要家の工場を見学した。生産現場を歩きながら、どの方が障害者なのか教えられるまで分からないほど、各工程に溶け込み働く姿があった。採用に当たっては「本当にここで働きたいと思っているか」を丁寧に確認し、配属においては障害の程度や種類を基準にするのではなく、その人の適性に合わせて仕事の内容をマッチングさせることを重視するのだという。当事者の意向を確かめつつ、職場空間やコミュニケーション・ツールに工夫を重ねてきたことも聞きながら、人と人が尊重し合う風土が自然なものに感じられた▼「怒られることはあっても、めったなことで社員は褒められない」とはある鉄鋼大手の周囲評。日頃お邪魔する会社はどちらかというとそのタイプが多い。今回訪ねたのも社内で褒め合うという会社ではないのだが、障害者の雇用管理・雇用環境の改善に取り組み、マスタープランの策定、相互コミュニケーションの充実やキャリアアップに向けた取り組みを進める事業所だけに、「やたらと怒られる」という雰囲気は感じられない▼誰もが働きやすい環境を整備することが企業の社会的責任だという認識が原点にあるという説明にも、素直に合点がいった。

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