日本代表帰国会見、全文書き起こし(その1)『8年周期ではダメ』

5日、ワールドカップ・ロシア大会での戦いを終えた日本代表チームが帰国した。

それに合わせて日本サッカー協会の田嶋幸三会長、日本代表西野朗監督、日本代表キャプテン長谷部誠選手の会見が行われた。

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今回はその全文を書き起こしたものをお届けしたい。

田嶋幸三(日本サッカー協会会長) 「選手たち23名、井手口選手、浅野選手、さらに予選などに関わったすべての選手、また西野監督やスタッフが本当に集結したことで素晴らしい試合ができました。本当に誇りに思うし感謝したいと思います。

長きに渡って日本サッカーを支えてくださっているキリン株式会社様、アディダス様、サポーティングカンパニーの皆様にも感謝申し上げます。

また、この選手たちを育ててくださった全ての関係者の方々、様々な活動をされているフットボールファミリーの方々にも感謝したいです。

関心を持って頂いた日本国民の方々、それを報道してくださった方々にも感謝したいと思っています。

そして『日本代表なんか嫌いだ、応援なんかしない』と思ってくださった方々も、関心を持ってくださったという点で感謝しなければなりません。

我々は『サッカーを文化にしたい』と活動しています。西野監督とは技術委員長時代からそのことについて常に議論していました。それが少しずつ形となって表れたのがこの大会だと思います。

ポジティブな面もネガティブな面も、すべてはサッカーを文化にするということに繋がっています。

残念ながら、このチームはここで解散します。素晴らしい試合をしてくださった皆、それを支えた家族の方々にも感謝しなければならないと思います。

次に向けてサッカー協会はまた新たなスタートを切っていきたいです」

西野朗(日本代表監督) 「今日は通訳機がないので安心して喋れます。

途中で帰国することになりましたがチャーター機を使わせて頂きました。ありがたく思います。選手23人全員が重大な怪我もなくクラブに戻せることにも安心しています。

一部選手からは、協会から休みを与えるよう伝えてくれと言われています。所属クラブには調整していただければと思います。

5月21日からワールドカップに向けて最終調整に入り、監督としては46日活動させていただきました。

ブラジル大会から4年、色々な思いを持ってロシアへ行こう、日本サッカーのために成長したいという思いで入っていく。私自身が同じピッチに立つと、その思いは全く違いました。

選手たちロシアに向かう意識が、非常に高いものがありました。その強い気持ちなしでは勝つことはできませんでした。

前監督の財産があり、さらに本大会でできることを探りながら、本当に素晴らしいサッカーを披露してくれたと思います。

結果は1つしか勝てませんでしたが、ワールドカップでの1ポイント、1ゴール、1プレーというのが本当に厳しいということ。

私自身も初めての経験で、グループステージを突破すること、そしてノックアウトステージで勝ち上がることの本当の厳しさを知らされました。そういう感覚を持ち合わせていなかったということもあります。しかし、選手たちは本当に逞しく戦ってくれました。

携わってくれたスタッフには感謝したいと思います。

現場のコーチングスタッフ、サポーティングスタッフはもちろん、国内で、ロシアで、オーストリアでベストな環境を作ってくれたたくさんのスタッフに感謝したい。国民の皆さんの後押しを感じながら戦うことができました。

残念ながら途中で帰ることになりましたが…8年周期でベスト16にチャレンジしてという、そのスパンではダメだと思います。

次のカタールでまちがいなくベスト16を突破できる、その段階にはある。必ず4年後、選手たちが成し遂げられる状況に繋げた…という成果だけは感じたいと思います。

本当にこの場をお借りしてお礼を申し上げなければならないんですけれども。選手たちのこれからの活躍、躍進に期待したいと思っています。

メディアの皆さんからも非常に厳しい意見、評価をしていただきましたが、それも大いに糧になりましたので、これからも厳しい目でサムライブルーを見ていただくことも大事かなと思います。本当にありがとうございました」

長谷部誠(日本代表主将) 「日本中の方、そして現地まで足を運んでくださったサポーターの方々、日本で沢山の方々が応援してくださっていることが、選手たちの耳に届いていました。

本日も空港で多くの人々が出迎えてくださって、選手冥利に尽きます。

今回のワールドカップを通じて。大会前にはあまり期待されていなかったと思うのですが、無関心というのが一番怖いと思っています。

このW杯でまた関心を集められたと思うので、引き続き日本の皆様には代表だけではなく、Jリーグや女子など様々なカテゴリで日本サッカーに関心を持っていただき、時には暖かく、時には厳しくサポートをお願いしたいと思います。

本当に素晴らしいサポートをありがとうございました」

以下、代表質問

西野朗(日本代表監督) (成田空港でファンの出迎え、感想は?)

「代表チームが海外の大会を終えて帰ってくる。国民に競技の素晴らしさ、感動や喜びを与えた選手を迎えてくれる瞬間。スポーツほどこんな感動を与えられるものはないと思います。

日本を出るときには、ワールドカップで強いチャレンジをして、成果を上げて戻れれば、ああいう歓迎を受けられるという思いはありましたし、必ず期待に応えたかった。

ただ、やはり本当に十分な成果をあげてきたというわけではない。ワールドカップの厳しいところもご存知の上で迎えてくれた。出し尽くした選手の姿がおそらくロシアにあった。結果だけではない戦いぶりが、空港に来られた方だけではなく皆さんに伝わったのかなと思います。

サッカー界は50年に優勝するということを掲げています。何か次に繋がる、下のカテゴリの世代に繋げる1ページ…半ページになったという気持ちがあります。

半分申し訳ないと思いながらも、今日の出迎えはありがたいし、感謝したいと思います。これが次への力だと思いたいです。嬉しい限りです」

長谷部誠(日本代表主将) 「出発時に比べてたくさんの方々に出迎えて頂いて嬉しく思いますし、この熱気を次に繋げていってほしいなと思います」

西野朗(日本代表監督) (この46日は監督にとってどのようなものでしたか?)

「準備期間も自分の役割も短いことはハッキリしていました。

まず大きな財産があったわけです。ブラジルの敗戦から日本サッカー界が試行錯誤しながら次へと強化していき、ロシアへの切符をとった。その後も強化をしてロシアへ向かっている。

私はわずかに帯同してチームを客観的に見る中で、5月21日に選手と会ったとき「それだけではロシアで戦えないな」と感じました。今までのチーム力だけでは…と素直に思いました。

何かを劇的に変えること、それが代表ではできる。今まで培ってきたものに足していけば、なにかチャレンジできるのではないか、対抗できるものもあるのではないか。そのようなアプローチを選手たち、コーチたちにしてきました。

まず選手たちが、その培った財産に『プラス何か』ということを私以上に感じていました。短い間で選手それぞれが見つけてきた。自分はそのサポートをしてきたという感じです。

危機感というものもあったのか、やれることはまだあると感じながら始めたのか。選手たちの意欲…それは遡ればブラジルやその前を経験した選手もそうだが、ロシアでの強いチャレンジに向けてそういう気持ちでやってくれたということ。

賭けだったという部分はあります。選手も、私自身もそう。リスクを負ってやらなければならないこともあったが、そのような意欲の中で好転していった。選手たちに引っ張られた所も多いです。素晴らしい選手たちだったと思います」

西野朗(日本代表監督)(ベルギー戦が終わってから帰国するまで、選手にはどのような言葉をかけた?)

「そうですね、何言ったっけ?(長谷部に聞く)

ある小さい選手が、グループステージを突破した翌日にいきなり発言しました。4年前の話をしたかったんでしょうけど、ブラジルという単語を言った瞬間に言葉を詰まらせたんです。

泣きじゃくりながらその思いを…グループステージを突破した翌日の話なので、おそらくそういう回想をしながら詰まってしまった。そういう瞬間がミーティングルームでありました。

私も、ロストフで倒れ込んで背中で感じた芝生の感触、空の色、それを忘れるなと。ベンチに座っていた選手には、この居心地の悪いお尻の感触を忘れるなと。

僕が言わなくても、その小さい選手が話してくれたことは、これからの4年…4年ではないですね。もっと早い段階で世界に追いつくための姿勢を与えてくれた選手がいたので。

あの悔しさというのは私自身も感じたことがないもの。自分が判断する猶予もない中で、選手が3点目もいけるのではないかというほどアグレッシブに戦ってくれた。しかし残り30分でああなって、何も修正できなかった。

あれが世界であると思うし、あれに対抗していくのがこれからの課題です。とにかく、日々鍛えて成長していかなければならないね…という話でしょうか」

長谷部誠(日本代表主将)(ブラジル大会からの4年間を振り返ると?)

「ブラジルで多くの選手が味わった悔しさ、サポーターの失望感。それを乗り越えるために、そして更に上に行くために4年間やってきた。それは選手たち全員にあって、悔しさがチームを引っ張っていったのかなと思います。

ブラジルが終わった当初は、ロシアのピッチに立っている自分は想像できませんでした。今振り返ってみればあっという間でした。他の選手がどう感じていたかわかりませんが、それぞれ所属チームは違えど、心の奥底にロシアへの思いを共通して持っていたと思います。

それが強かったことが、グループステージ突破に繋がりました。ただ、これに満足しているわけではありませんし、今回の悔しさを踏まえて、カタールではさらに上に行って欲しいです」

長谷部誠(日本代表主将)(大会を終えてみて?)

「選手が口を揃えて話していたのは『期待されない雰囲気をひっくり返してやろう』と。

そういう思いは強かった分、皆様の期待を取り戻すことになったと思います。『やってやった』じゃないですけど…そういう気持ちももちろんありますし、皆様の厳しいお言葉が力になったのかなと」

長谷部誠(日本代表主将) (代表引退を発表したが、涙を浮かべる選手もいた。ショックを隠しきれない仲間もいたのでは?)

「自分本位でこのようなことを発信するのは、不躾であるというのは承知しています。サポートしてくださった皆さんにお礼を伝えたいということで発表しました。本当に多くのサポーターから温かい言葉を頂きました。

僕のことをおそらく鬱陶しく思っているチームメイトも…若い選手にもいろいろ言うので。でも涙してくれる選手とか、様々な嬉しい言葉をかけてくれる人がいたというのは、言葉で表せない喜びです。素晴らしい仲間を持ったなと思います」

長谷部誠(日本代表主将) (今大会ベスト16を達成できたのは、ベースキャンプの環境があったからだと思います。カザンのキャンプ地については? )

「カザンは本当に素晴らしい環境でした。選手たちは満足していましたし、あそこで働いてくださった現地の方々も素晴らしいサポートをしてくれました。キャンプ地だけではなく、スタッフや協会が選手がストレスを感じない環境を作ってくださいました。

オーストリアのキャンプ地に向かうときも、チャーター機を用意して頂きました。こんなに素晴らしくていいのかと思うくらいです。

それが力を出せたというところに繋がりました。代表のコンディショニングトレーナーも素晴らしいサポートをしてくれました。選手たちは感謝しています」

田嶋幸三(日本サッカー協会会長)(田嶋会長、今話せる限りで今後の代表監督についてのプランは?)

「まずもう来月にはアジア大会が始まります。日本は東京オリンピックの世代で臨みます。若い選手が出場するチャンスが非常に多くある4年間です。今いる選手、新たな選手がどんどん出てくるように準備し、仕掛けていく必要があります。

監督についてはまだ白紙です。技術委員会で話し合って早い時期に決めたいと思っています」

(その2)に続く…

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