日本代表帰国会見、全文書き起こし(その2)『長谷部を超えるリーダーが必要』

5日、ワールドカップ・ロシア大会での戦いを終えた日本代表チームが帰国した。

それに合わせて日本サッカー協会の田嶋幸三会長、日本代表西野朗監督、日本代表キャプテン長谷部誠選手の会見が行われた。

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(その1)に引き続き、メディアの質問に対する回答を書き起こす。

長谷部誠(日本代表主将) (長谷部選手、代表引退発表の661文字が感動を呼びましたが?)

「感動してくださったというのは初めて聞きました。多くの反響を頂きました。これは何事にも代えがたいものです。12、13年代表でプレーさせて頂いて、今これが終われば日本代表としての公式の仕事は全て終わりになります。喪失感はすごいです。

飛行機の中でも雲を見ながら感傷に浸っていました。いまは99%の満足感と、1%の後悔があります。その後悔をこれからの人生に繋げたいです」

長谷部誠(日本代表主将) (次世代の選手たちに引き継いでほしいことは?)

「散歩隊は続けて欲しいですね。僕はあまり参加していないのですが、あれもコミュニケーションのひとつなので…ここは笑ってほしいところなんですが(笑)

選手たちが『やらなければ』という気持ちを作り上げていった戦いでした。それが日本代表のベースになると思うし、若い選手が引き継いでくれると思っています」

西野朗(日本代表監督) (西野監督の今後は?)

「契約は今月末までなので、仕事を請けた瞬間からワールドカップ終了までという気持ちだけでやってきました。今はこういう形になったが、任期を全うしたというだけです」

長谷部誠(日本代表主将) (長谷部選手、大会前から代表引退を決めていたという中で戦った気持ちは)

「日本代表という場所は特別です。いつ誰が選ばれるかわからない。今度の9月に選ばれなかった選手は、『元代表』という肩書きがつく場所です。ですから、これまでも目の前の試合が最後というつもりでやってきましたし、それは今回も変わりませんでした。

ただ、より一つ一つのプレーに思いを込めながらやっていましたし、その分今は『終わったな』という感傷的な気持ちがあります」

長谷部誠(日本代表主将) (ベルギー戦後のロッカールームが話題になりましたが、誰が発起人なのですか?)

「日本代表のスタッフは毎試合ロッカールームを清掃してくださっています。

スタッフの方々を選手として誇りに思いますし、サポーターが試合後にゴミ拾いをしてくださったりも。

いろいろな国に行きますが、日本ほど綺麗な国はないと思うくらいです。素晴らしい精神を持っていると感じます。一人の選手としてだけではなく、一人の日本人として誇りに思います」

西野朗(日本代表監督) (ベルギー戦の直後に「何が足りないんでしょうね」と仰った。それが何かはわかりましたか?そして今回の経験を踏まえてサッカー協会に伝えたいことは?)

「あの言葉を発するまで少し時間を頂いたかと思います。

ゲームが日本にとって好転していく中で、あのシナリオは考えられない状況でした。あの30分間で判断できるスピード感が自分には全くありませんでした。まさかああいう状況になるとは考えられなかった。自信を持っていましたし、3点目を取れるチャンスもありました。

しかし、やはり紙一重なところで流れが変わってしまう。私だけではなく選手もまさかの30分だったと思います。それに対して、選手がというよりは、『何が足りないか』というのは私自身で自問していたことです。

こういうときにどういう感覚が働けばいいのか。グループステージの3試合目の10分でもありました。チームが一つになっていく方向性を生かせるタイミングは瞬間なので、それがベルギー戦の残り時間ではできなかった。そこについて何が足りないんだろうという思いです。

これからは、A代表が一朝一夕に爆発的に成長していくということはないと思います。

日本のアンダーのカテゴリは本当に期待できます。U-20、U-17。彼らは世界で渡り合える力があります。そういう育成に対して協会が働きかけてきた状態だと思います。

単純に4年後のカタールにと漠然と言っているわけではなく、着実に底上げができています。A代表が入れ替わる可能性もあると感じていますし、スケールが大きく、ダイナミックで、かつ日本人らしいボールを使ったサッカーができる。育成に対してさらに力をかけていくということをしないと、A代表だけという訳にはいかないと思います。

海外組と国内組、それが融合していかなければならないという難しさがあります。シーズンが違うからです。9~11月のA代表の活動が毎年強化にならないくらいの状況があります。

個は成長していくとしてもチームとして、各カテゴリでの融合をどうするか。改善は難しいが考える必要があると思います」

田嶋幸三(日本サッカー協会会長) 「ロシア大会を振り返ります。

私はロシアに長く滞在することはなかったのですが、大会前と後ではイメージは大きく変わりました。

人々は親切で高潔性があり、大会の組織運営もすばらしいものでした。各クラブが持っている施設もスタジアムもトップレベルです。ロシアの組織、国民の皆さんに感謝したいです。

私は2ヶ月前に1%でも勝つ確率を上げたいと申し上げました。出発前の会見でも西野さんは『小さな奇跡を起こしたい』と仰った。そのなかでベスト16に入れたのは選手たちの努力です。改めて誇りに思います。

長谷部誠選手、本田圭佑選手のこれまでの貢献に感謝したいです。そして次に繋げる選手をしっかり育てていくのが、我々の役割だと思っています。

そしてサポーターの方々のことや、ロッカールームのことを皆様が話題にしてくださいました。

SNSでは今洞窟に閉じ込められているタイのサッカーチームの皆様にエールも送らせていただきました。このようなことが自然とやれるようになったということが、日本サッカーの成熟を表しています。彼らが無事救出されることを祈ります。

西野監督とは様々なことを話しました。7月末に任期は満了となります。彼とは40年以上の付き合いですが、監督就任をお願いする時、結果がどうであれここで終わりということを約束しました。

それは守りたいと思いますし、慰留もしていません。また違った形で日本サッカーに貢献し、サポートしていただければと思います」

西野朗(日本代表監督) 「ユース代表の監督、オリンピック代表の監督、さらにJリーグで16シーズン続けてやってきました。そして協会から技術委員長で2年、ワールドカップ直前に監督。全てのカテゴリ、クラブで経験させて頂きました。

大きな最後のミッションだったと思いますが、7月末で契約満了という中では精一杯仕事をさせてもらいました。

私は2ヶ月間だけしかいなかったので、4年かけてやってきたワールドカップの全てを統括することはできません。

現場の選手たちの思いは想像以上に強かった。そういう選手たちのリーダーとして長谷部がいて、彼が夜中に代表引退を自分に伝えてくれました。

『えっ、まだだろ』と思いましたが、これも想像以上の長谷部の気持ちがあると。

それも計り知れないことですし、彼が決断したものなので間違いないと。そういうリーダーに導かれた代表チームの力も計り知れないものです。

次のリーダーがどうなるのかはわかりませんが、大変なポジションです。長谷部を超えるリーダーシップを持つ選手が立たなければならないと思います。そういうリーダーに支えられてチームが成り立つということも感じました。

たくさんのスタッフに支えられていることも感じました。ありがたく思っています。

根底にあるのは国民のサッカーへの関心。それがもっと増えるように、代表チームが活動をしていかなければならないと感じています。

まちがいなく未来は…アンダーのカテゴリも含めて、世界でも良い活動ができると思います。たくさん応援してあげて欲しいと思います。本当にありがとうございました」

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